「都会のオアシス」をコンセプトとして構想された、MVRDV(オランダ・ロッテルダム)によるプロジェクト「La Serre(ラ・セール)」の建設がこのほど開始された。
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フランス首都パリの南西部に位置するイッシー・レ・ムリノー市に建設される予定のLa Serreは、従来のマンションとは一線を画す、生物多様性に富んだ「安息の地」を都市の中に作り出すことを目指して設計。住宅と店舗、そして自然が詰め込まれた18階建てのラックのような建物は、自然をコンパクトな都市空間に完全に統合している。
単なるマンションではなく「縦に広がる村」としてデザインされたLa Serreは、190戸で構成されており、そのうち30%が公営住宅に割り当てられる。すべての住戸に専用のバルコニーやテラスが設置できるようになっており、共有の庭やエリアを合わせると、屋外スペースは約3000平方メートルにまで及ぶという。
La Serreの庭園には150種類もの植物が植えられ、そのうちの70%が自生植物。建物の高さや太陽光・風の当たり具合等を考慮して慎重に選定されている。都市の動物相を保護することも同様に重要視され、生態学者の協力の下、鳥や蝙蝠の巣箱も設置。さらには、資源管理における持続可能性を強調するため、回収した排水を使った都市の暖房ネットワークも活用するなど、「都市の中の自然」というテーマを徹底的に意識している。
建物の居住エリアの25%以上がテラス及びバルコニーに充てられており、居住者一人当たり平均して15平方メートルの屋外スペースを確保。植物は共用エリア・専用バルコニー問わず専属の庭師によって手入れされ、適切な維持管理が保証されるという。
MVRDVの設立パートナーであるヴィニー・マース氏は、「La Serreで、私たちは都市の中心部に自然をもたらします。この緑豊かな縦のコミュニティは、その生き生きとしたファサードによって、真の社会的および生態学的生態系の本拠地となる」と説明。
さらに、「ラ・セールは、生物学的なものと社会的なものを建築の中でいかに同時に育むことができるかを示しており、イッシー・レ・ムリノー市に真の都市居住空間を創りだしています。このプロジェクトで人と自然の幸福を活用することで、パリ地域だけでなく世界中で、持続可能なハイブリッド型建築にインスピレーションを与えたい」とプロジェクトの意義を強調した。
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