科学者らでつくるグループは5日公表した報告書で、今年の化石燃料に由来する世界の二酸化炭素(CO2)排出量が、過去最大になるとの見通しを示した。気候変動を悪化させ、これまで以上に甚大な被害をもたらす異常気象を誘発すると警鐘を鳴らしている。
報告書によると、昨年に過去最高を更新していた世界全体のCO2排出量は今年、森林伐採などがわずかに減少したことで、前年からほぼ横ばいとなっている。
今年各国で排出された化石燃料由来のCO2は、前年比1.1%増の368億トンになると試算。土地利用に関係する排出を含めれば、世界のCO2排出量は計409億トンに上るという。
石炭や石油、ガスからの排出量はいずれも増加。インドと中国が押し上げた。中国での増加は「ゼロコロナ」政策撤廃後の経済再開に伴うもので、インドについては再生可能エネルギーの発電能力を超える電力需要の伸びを化石燃料で穴埋めしたことが影響した。
研究を主導した英エクセター大学のフリードリンシュタイン教授は「現時点で(産業革命前からの気温上昇を)1.5度以内に抑えるパリ協定の目標を上回ってしまうのは避けられないように思える」と指摘。国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に集まっている指導者に対し、排出量の急速な削減で合意するよう呼び掛けた。
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