法務省の法制審議会は11月21日、区分所有建物の建替えについて定める「区分所有法」の改正素案(たたき台)を示した。マンションやアパート、団地、被災した建物などの建替えを円滑に進めるため、集会決議時の母数から所在不明の区分所有者を除外するほか、必要な区分所有者の合意要件(多数決割合)を現行の「5分の4以上」から、条件付きで「4分の3以上」にすることを検討している。
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「4分の3以上」となる条件は、①地震に対する安全性に係る建築基準法への不適合、②火災に対する安全性に係る建築基準法への不適合、③外壁、外装材など建物の一部が剝離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるもの、④給水、排水など配管設備の損傷、腐食・劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるもの、⑤高齢者、障害者などの移動円滑化に関わる基準への不適合―とみなされる建物。これらの条件に該当しない場合は、現行の「5分の4以上」が要件となる。
一方、団地の建替え要件については、全棟の建替えでは基本的な多数決割合は「5分の4以上」だが、客観的な緩和事由が認められる場合は「4分の3以上」で可能に。併せて行う各棟での決議では、現行の「4分の3以上」を基本とし、客観的な緩和事由が認められる場合は「過半数」での決議を認める。1棟のみ建て替える場合は、「4分の3以上」を基本としつつ、客観的な事由が認められた場合は「3分の2以上」での決議を可能とする。
火災や震災などで被災した建物(被災区分所有建物)は、建替え、リノベーション、敷地売却などの決議が「3分の2以上」で可能に。さらに大規模な損壊があった場合には、3年間の決議可能期間延長を認める。
他に改正素案では、所有者が不明となっている専有部分や管理不全の占有部分・共有部分を管理するための管理制度、共用部分の変更決議・復旧決議の要件緩和、管理に関する事務の合理化(規約の閲覧方法のデジタル化)などについても示している。法務省では、年度内に改正案を取りまとめ、来年の通常国会に提出する考え。
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