中小企業庁は11月28日、「価格交渉促進月間(9月)」のフォローアップ調査結果(速報版)を公表。これによると、「コストが上昇せず価格交渉は不要」と回答した受注企業の割合が3月時点の7.7%から16.4%に上昇。「コストが上昇したが価格交渉は不要」と判断した割合も11.8%から17.3%に上昇していることが分かった。また、発注減少や取引停止を恐れて、価格交渉を行わなかった企業の割合は9.4%から5.6%に減少した。
同庁は、コスト上昇が一服したことに加え、価格転嫁がある程度進んだことにより、価格交渉を不要と考える企業が増加したのではないかと分析。その一方で、「交渉資料を準備できない」「価格改定の時期が数年に1度」などの理由で、機動的な価格交渉ができていない事業者もあるのではないかと推察している。
この調査は毎年3月と9月に設定している「価格交渉促進月間」の期間中に実施したアンケート調査(回答数3万5175社)および下請Gメンによるヒアリング(約2000社)の結果をまとめたもの。
価格交渉の状況については、発注側企業から交渉の申し入れにより価格交渉が行われた割合が、3月の7.7%から14.4%に倍増。価格交渉を希望したが交渉できなかった割合は17.1%から7.8%に減少した。これらの結果から、同庁では「価格交渉できる雰囲気が醸成されつつある」と判断した。価格交渉に応じた職種についてのランキングでは、「建設業」は19位から14位に上昇したが、「建材・住宅設備」は5位から17位に下がっている。
実際に価格転嫁が行えたかについては、コスト全体での転嫁率が45.7%(3月から1.9ポイント減)となった一方で、「コストが上昇せず価格転嫁は不要」との回答が8.4%から16.2%と2倍に。要素別では、原材料費・エネルギー費・労務費のいずれも「価格転嫁は不要」が10ポイントほど増えている。職種別の転嫁率ランキングでは、「建設業」は17位から15位に上昇したが、「建材・住宅設備」は9位から14位に下降。「建設業」では労務費の価格転嫁率が上昇している。
来年1月、発注企業評価公表
政府では、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に向けた指針を11月29日に公表。この指針が交渉・転嫁に現場で活用されるよう、経済団体などを通じて周知を行う。また、2024年1月には主要な発注企業ごとの評価を公表し、評価が低い発注企業に対して指導・助言を行う。
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