網代建設(山形県米沢市)の網代修さんは、大学院でのリスキリング(学び直し)をきっかけに「地域課題」「地産地消」という視点で住まいを見つめ、事業の再編、家づくりの再構築に挑んできた。地元米沢を思うひたむきな姿勢と行動力を見てほしい。
1964年に祖父が創業して住宅事業を開始、現社長の父が土木事業を立ち上げて総合建設業に。次期社長で常務の網代修さんは大学卒業後、県外の建設会社に就職した後、家業に戻った。「外から眺めている限りは地元で有力な住宅会社だと思っていたのですが、いざ入ってみると得意としていた和風住宅をやめてローコストに転換しており、棟数を追うあまり忙しいのに利益が残らない会社の典型でした」と振り返る。
大学院きっかけにリノベに着手
社内を少しずつ変革しようと、29歳で山形大学大学院に入学したことが転機となった。大学院では経営と地域課題を専攻。「最初は社内のまずいところを変えたい一心でしたが、地域の問題解決と持続可能性の重要性を学ぶうちに、地元米沢の空き家問題に気づいたのです」。
在学中に空き家のリノベーションに挑戦すると決め、修了後すぐの2016年、周囲の反対を押し切ってリノベブランド「アジリノ」を開始。「古いものをただ新しくするだけでは空き家問題の解決にならない。“新築を超える何か”がないと」と考え、既存建物の特徴と部材を生かした「新旧融合」のスタイルを打ち出した。
手始めに築42年の空き家を購入。設計は外部のアトリエ系設計事務所と組むことでデザイン性を確保するとともに、設計者の考え方や納まりのテクニックを習得する社員教育の機会にもした。この建物はリノベの情報発信拠点として3年間運営した後、売却にも成功している。
入社当初は社内で孤立していた網代さんだが、こうした取り組みを通じて少しずつ同年代の社員が入るようになり、共感者を増やしていった。
目指すのは「長く残る家」
もうひとつの転機は5年ほど前・・・
この記事は新建ハウジング11月30日号16面(2023年11月30日発行)に掲載しています。
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