現代建築の主要な建材であるコンクリートは、古代ローマ人の発明品であるセメントという接合材によって、その高い硬度、頑丈さ、耐久性を発揮する。しかし、セメントは製造において大量のCO2を排出する気候キラーである。世界のセメント産業は現在、CO2排出の8%を占めている。よって、いかにセメントの使用量を減らすかが、現代の課題である。
壁や床、天井に使われているコンクリート(セメント)は、積層木材パネルなどによって補うことができる。しかし基礎はそう簡単ではない。地面の湿気があるため、コンクリートが主流で、ベタ基礎や布基礎が通常用いられている。これに代わるエコな方法はあるのか?
近年、中央ヨーロッパで、「杭打ち基礎」が、コンクリートに変わるものとして普及し始めている。鋼鉄製のスクリュー型杭を地面に打ち込んで、その上に積層木材パネルを固定する、というやり方だ。
看板や公園の遊具、野立てのソーラーパネルなどに使われている杭を、構造計算をした上で、建物の基礎としても使用する、というもの。代表的なスクリュー杭のメーカーであるドイツのKrinner(クリナー)社は、地盤の質によって、杭の長さやスクリューの形状など、さまざまなタイプの商品をラインアップしている。
スクリュー杭を地面に打ち込むだけなので、コンクリートは必要ない。CO2排出をだいぶ抑えることができ、コストも安くなる。床下の地面は、蓋をされずに生きたままの状態なので、生物のビオトープになる。中央ヨーロッパでは地下室をつくることが多いが、近年、建設コストの高騰により、費用が嵩む地下室を断念する建主も多くなっていることから、この手法の魅力が高まっている。
クリナー社のスクリュー杭の製品は現在、野建てソーラーなどの分野で日本でも使われているが・・・
この記事は新建ハウジング11月30日号7面(2023年11月30日発行)に掲載しています。
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