LIXIL(東京都品川区)は11月21日に開いた記者発表会で、窓・ドアブランド「TOSTEM」(トステム)を含む窓製品の新たな事業戦略を公表した。環境負荷を低減する窓を「GREEN WINDOW(グリーンウィンドウ)」と呼び、販売展開を行う方針。
「TOSTEM」は販売から今年で100周年を迎え、現在世界150カ国で事業を展開している。アジア地域におけるハウジングテクノロジー(LHT)の売上高は、2023年度には264億円となり、22年比で約1.4倍に成長。中でもインドでは、22年度比約2.5倍(売上高24億円)となるなど、急成長を遂げている。欧州では2019年に、世界の建築業界のトレンドや最先端の技術・デザインを取り入れる目的で、ドイツに「欧州技術リサーチセンター」 を開設。世界トップクラスの技術とデザインを積極的に導入している。
世界のトレンドは「パッシブ設計」
同社によると、欧州やアジアでは窓の大開口化が進み、外の自然や景観を住まいに取り込む「大きな窓」がトレンドとなっている。特にドイツなどの環境先進国では、断熱、日射熱、日射遮蔽、自然風利用、昼光利用などを設計に取り入れた「パッシブ設計」の考え方が浸透。エネルギー消費を抑えながら快適で環境負荷の少ない住まいづくりが進んでいる。また、建物や建材の環境負荷をライフサイクル全体で評価する「LCA」(ライフサイクルアセスメント)への意識も高まっている。
一方、日本では「アクティブ設計」と呼ばれる、高性能な設備を活用して住まいの省エネ化を実現する考え方が主流。さらに断熱性能が重視される傾向から、窓の開口部は小さめで、窓の数も少ない。日本がグローバルなトレンドに追従するためには、「パッシブ設計」の考え方を取り入れるだけでなく、窓の価値をライフサイクル全体で評価し、調達から製造・使用・廃棄までの環境負荷を見える化することが必要となる。
日本にとって「最適な窓」とは
日本における「最適な窓」とは、日本特有の気候条件を考慮したものであり、何が最適かについては地域により異なる。例えば、太平洋側と日本海側とでは日射量に2倍もの差があるとされ、約10㎡だった窓の面積を約20㎡まで広げることで約3000W分(電気ストーブ3台分)の熱量を得て、暖房負荷を軽減できる場合がある。逆に夏の日差しが強い地域や場所では、シェードやブラインドなどで遮光することで、冷房負荷の低減を図ることが可能となる。
TOSTEMの「GREEN WINDOW」では、良い窓の水準として次のような基準を掲げた。
具体的には、寒冷地の北海道では、オペレーショナルカーボン(居住時のエネルギー使用によるCO₂排出量)による影響が73%と大きいため、ライフサイクル全体の観点から評価すると「樹脂窓EW」が「最適な窓」となる。一方で比較的温暖な東京は、エンボディドカーボン(建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量)による影響が多いため、アルミ樹脂複合である「ハイブリッド窓TW」が「最適な窓」となる。
同社では、ライフサイクル全体から環境負荷への影響を定量的に判断する簡易算出シミュレーションを開発。2024年春から省エネ住宅シミュレーションにCO2削減量のレポート機能を実装する。さらにエンボディドカーボン削減に向けて、樹脂フレームとガラスを容易に分離回収できる構造を採用。これまで分離できずに埋立てられてアルミのリサイクル率を、2031年3月期までに100%とする考え。
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