外国人技能実習制度の見直しを検討している政府の有識者会議(座長=田中明彦・国際協力機構理事長)は11月24日、最終報告案を取りまとめた。現行制度を廃止して創設する新制度について、外国人の転籍(転職)を就労開始から「1年超」で可能とする原則を明確にした。先に修正案として示した転籍制限を「最長2年」とする内容は、委員の反対意見を受けて削除した。
新制度の名称は「育成就労」とし、人材確保に重点を置く。受け入れる外国人を「労働者」と規定。未熟練の外国人を3年間で一定の知識・技能が必要な「特定技能1号」の水準に育成する。「1号」への円滑な移行を促し、外国人の中長期的な就労につなげるのが狙いだ。
現行制度は人材を育成する観点から最初の3年間は転籍を原則として認めていない。有識者会議は10月、新制度ではこの転籍制限を緩和し、同じ企業での就労が1年を超えるなどの条件を満たせば、同じ分野に限って転籍を可能とする案をまとめた。労働基準法が「有期契約の労働者は1年経過後にいつでも退職できる」と規定していることを踏まえた。
これに対し自民党内から「地方から都市へ人材が流出する」などの異論が噴出。有識者会議は今月15日に修正案を示し、就労から1年超で転籍可能とする原則を維持しつつ、例外措置として、政府が分野ごとに「2年を超えない範囲」で転籍制限期間を延ばせるとした。
この修正案には会議の委員から「地方からの人材流出防止を目的に労働者の権利を制限することは正当化できない」との強い反対意見が出された。このため、最終報告案は修正案で加えた記載を一転して削除。代わって「転籍が認められることによる急激な変化を緩和する必要性に留意する」とした上で「当分の間、分野によって1年超の期間の設定を認めるなど経過措置を検討する」と記述。例外を設ける可能性に言及した。
有識者会議は「委員の意見がおおよそ収れんした」として、最終報告の策定を田中座長に一任した。月内にも小泉龍司法相に提出する。政府は来年の通常国会に関連法案を提出する方針。
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