国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで30日に開幕する。産業革命前からの気温上昇を1.5度までに抑える目標に向け、各国が進捗(しんちょく)を点検。温室効果ガスを大量排出する石炭や石油など化石燃料の「段階的廃止」に踏み込んで合意できるかが焦点の一つで、エネルギー資源に乏しい日本は難しい対応を迫られる。
1.5度目標は、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で掲げている。COP28では、世界全体の排出削減の進捗状況を点検する手続き「グローバル・ストックテイク」を初めて実施する。各国が提示する削減目標の強化に向け、機運を高められるかが問われる。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が3月に公表した報告書は、各国が現在取り組んでいる排出削減では、2030年代前半には気温上昇が1.5度に到達する可能性があると警告。目標達成には、30年までに温室ガスを19年比で約4割削減する必要があるとした。
化石燃料は温室ガスの大量排出源であることから、近年のCOPではその対策が主要議題となってきた。21年のCOP26では、排出削減対策が講じられていない石炭火力の「段階的削減」で合意。昨年のCOP27でもこの路線を踏襲した。
COP28で欧州連合(EU)などは、対象を化石燃料全体に広げて段階的廃止を求める方針だ。これに対し、サウジアラビアなど産油国が反対するのは必至。同じ産油国のUAEが議長国であることから「自国の利益に反する合意には消極的になるのではないか」(交渉関係者)との声も漏れる。
日本は化石燃料を段階的に廃止する場合でも「温室ガスの排出削減対策を講じていれば、石炭火力の稼働を当面認めるべきだ」と主張する構え。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さないアンモニアと混ぜた石炭火力の技術開発を進めるが、環境NGOなどからは「抜け道だ」と厳しく批判されている。
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