国土交通省は、マンションの将来的な修繕工事に備え、入居者らから集める積立金のうち、築年数に応じて段階的に額を増やす段階増額積み立て方式について、適切な引き上げ幅の目安を示す方針だ。急激な増額により入居者らが支払えず、十分な資金が確保できなくなるケースを防ぐのが狙い。専門家による作業部会が今年度中に方向性をまとめる。
修繕積立金は、おおむね30年間で必要な工事の計画に基づき、各マンションの管理組合が設定している。段階増額方式のほか、主に毎月定額を集める均等積み立て方式がある。
作業部会では、段階増額方式とする場合、当初の積立額を低く抑え過ぎたり、最終年度までの引き上げ幅が急激になったりすることを防ぐため、引き上げ幅の範囲に関し一定の目安を策定する方針。引き上げ幅は、2022年4月に導入された、適切な管理計画を持つマンションの認定制度の新たな基準として盛り込む。
認定されたマンションは市場で評価されやすくなるほか、住宅ローン金利の引き下げや固定資産税の軽減措置といったインセンティブもある。安定した積み立てが見込めるマンションにお墨付きを与え、老朽化対策が進むよう促す。
積立金を巡り、国交省は安定的な積み立てが可能な均等方式を推奨。ただ、初期の負担が少なくて済む段階増額方式を採る新築マンションは増え続け、10年代以降は7割近くに達している。計画の初年度と比べ最終年度の金額が10倍超に膨らむケースもあり、滞納が生じたり、所有者間で合意できずに予定した値上げが実現できなかったりするトラブルも起きている。
国交省の2018年度調査によると、計画に対して積立残高が「不足している」「不明」と回答した管理組合は全体の約3分の2に上る。マンションの老朽化により、資金不足で適切に修繕できなくなる懸念が高まると指摘されている。
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