東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、2023年の「後継者不在率」調査の結果を発表した。経営者の高齢化と事業承継が問題になるなか、「後継者不在率」は前年比1.9ポイント増の61.9%と初の60%超えとなった。
後継者不在率は、2019年が55.61%、2020年が57.53%、2021年が58.62%、2022年が59.90%と右肩上がりで推移しており、経営者が高齢の場合は廃業や事業譲渡など、倒産以外の選択肢を選べない企業の増加が懸念されている。一方、政府や自治体、金融機関などの創業支援により、2022年の新設法人数が過去2番目となるなど、若い経営者のもと事業承継を考える時期にない企業が増加したことも、後継者不在率上昇の一因と考えられる。
産業別では、10産業すべてで50.0%を上回った。建設業は前年比1.4ポイント増の61.5%、不動産業は同0.7ポイント増の60.6%だった。最も高かったのは、代表者が比較的若いソフトウエア開発などが含まれる情報通信業の77.3%だった。
後継者「有り」の6万6552社の内訳は、息子、娘などの「同族継承」が4万3257社(構成比65.00%)で最も多かった。次いで、社外の人材に承継する「外部招聘」が1万2055社(同18.11%)、従業員に承継する「内部昇進」が1万938社(同16.44%)と続いた。
後継者不在の10万4493社に中長期的な承継希望先を聞いたところ、最も多かったのは「未定・検討中」(構成比48.16%)で、事業承継の方針や計画が明確でない企業が依然として多いことがわかった。次いで「設立・交代して浅い又は若年者にて未定」(同45.82%)、大きく離れて「社内で人材を育成する方針」(同3.15%)と続いた。「廃業・解散・整理(予定含む)にて不要」は599社(同0.57%)だった。
代表者の年齢別では、創業から日が浅く、後継者の選定が不要な30歳未満(96.32%)の不在率が最も高い。30代は92.83%、40代は86.71%、50代は70.53%だった。60代以降で後継者「有り」が「不在」を上回るが、60代は46.18%、70代は30.53%、80歳以上でも23.83%が後継者不在となり、深刻な状況となっている。「(廃業予定など)承継は不要」と回答したのはわずか0.57%のため、代表者が高齢の企業の多くが事業承継の判断・対応ができていない実態がうかがえる。
事業承継には、金融機関やリース債務の個人保証の取り扱い、企業理念の伝承(改変)など数多くのステップがあり、拙速な承継判断は事業価値の毀損や企業価値の合意形成に禍根を残す可能性もある。同社は、代表者が高齢の企業を中心に、ライフステージと意向に寄り添う支援推進が必要だとしている。
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