国土交通省が11月13日に開いた社会資本整備審議会・住宅宅地分科会で、「住宅セーフティネット制度」「マンション長寿命化・再生円滑化」「住宅団地再生」など、「住生活基本計画」(2021年3月閣議決定)に基づく主な施策の取組状況について説明が行われた。委員から聴取した意見を踏まえ、施策検討を進める。
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住宅セーフティネット制度
「住宅セーフティネット制度」は、①住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度、②登録住宅の改修・入居への経済的支援、③住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援―から成る住宅支援制度。要配慮者には、低額所得者、高齢者、障害者、高校生相当までの子の養育者、外国人などが含まれる。
このうち②の経済的支援では、改修費補助、改修費融資など、賃貸住宅の保全に係る費用を支援している。2023年9月末時点での登録戸数は87万5855戸で、このうち要配慮者専用の住宅は5536戸。すぐに入居できる住宅が少なく、空き室率は2.3%となっている。
厚労省・国交省・法務省合同による有識者検討会では、要配慮者のニーズに対応した住宅の確保策として、▽改修費支援の柔軟な運用▽公的賃貸住宅ストックの積極的活用(募集停止中の公営住宅、空き住戸のサブリースなど)▽住宅以外の居場所(サードプレイス)づくりの推進―を検討。賃貸住宅の空き家・空き室が相当数あることを踏まえて、賃貸人(大家)の入居人に対する不安を解消しつつ、住宅ストックを活用する方針を示している。
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マンション長寿命化・再生円滑化
マンションの長寿命化では、今後のマンション政策の方向性について説明。①日頃から適正に管理し、大規模修繕によってストックの長寿命化を図ること、②修繕による機能回復が困難なマンションについては、建替えによる再生の円滑化を推進すること―を前提として掲げている。
有識者検討会では、マンションと居住者の両方における高齢化に対応するための具体策として、▽適切な修繕工事の実施(「段階増額積立方式」による修繕積立金の引上げ)▽建替え事業の各種制約への対応(住戸面積基準の引下げ・撤廃)―などを検討している。
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住宅団地の再生
住宅団地の再生については、高度成長期に建てられた多くの団地で住民の高齢化が進行し、空き家の発生が懸念されていることから、「地域再生法の一部を改正する法律」(2021年施行)に基づいて団地再生に向けた取り組みを実施。▽就業・交流の場など多様な用途の導入▽職住育近接の多世代共同のまちへの転換▽医療・福祉施設や生活利便施設、地域交通機能の充実▽リモートワークなどの環境整備―を行う。
支援策として、住宅市街地総合整備事業(住宅団地ストック活用型)により、①既存ストックの改修による高齢者支援施設、子育て支援施設、コワーキングスペース、生活サービス拠点となる施設や住替支援施設(生活支援施設)の整備、②公共空間のバリアフリー化、既存公共施設・コミュニティ施設の改修による整備、③既存住宅のインスペクション・性能向上リフォーム工事―に対する支援を行っている。
今後の検討内容としては、▽市町村の再生事業計画案を住民や民間事業者が提案する仕組みの創設▽住民や民間事業者と連携した再生手法の考案▽小規模店舗など日常生活に必要な施設の建築制限緩和―などが上がっており、2023年度中にとりまとめる考え。
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