外国人技能実習制度の見直しを検討する政府の有識者会議(座長・田中明彦国際協力機構理事長)は15日、現行制度の廃止と新制度の創設を求める最終報告たたき台の修正案を公表した。当初は就労先を変える「転籍」について1年超で可能としていたが、これを維持しつつ、最長2年の範囲で転籍を制限する期間を政府が分野ごとに定められることに改めた。地方から人材が流出するとの懸念があることを踏まえた。
会議では修正案への賛否は割れた。「国民の不安に応えるため一定の配慮が必要だ」と理解を示す意見が出た一方、「2年に延長する分野が増えれば、現行制度とあまり変わらない」との批判もあった。
新制度の名称を「育成就労」とする案も提示。残業については、技能習得の一環として行われるなどの場合は認めるとした。修正案は今回が第3弾。有識者会議は引き続き議論を重ね、年内に最終報告をまとめる。
現行制度は転籍について、最初の3年間は原則として認めておらず、人権侵害が生じる要因とされてきた。10月18日に示したたたき台は制限を緩和し、同一企業での就労期間が1年を超えるなどの条件を満たせば、同じ分野に限り転籍を可能とした。これに対し、「人材が都市部に流出する」「1年は短過ぎる」などの異論が自民党内で相次ぎ、有識者会議でも同様の懸念が示された。
今回の修正案は、就労から1年経過後の転籍を認めると同時に、(1)人材育成の観点から同一企業での就労を継続させる必要がある(2)1年経過後は待遇を向上させる―ことを要件に、政府が分野ごとに「2年を超えない範囲」で転籍制限期間を延ばせるとした。具体的には、所管省庁や業界団体の説明などを踏まえて設定する。
出入国在留管理庁は転籍制限の延長について、業務に危険が伴う分野や農業など季節性がある分野を想定している。同庁幹部は「地方や中小企業の不安を払拭する」と説明した。
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