2024年度税制改正で行う賃上げ促進税制の強化で、中小企業の赤字法人を対象に創設する税額控除の繰越制度の期間を10年間とするよう経済産業省が要望していることが14日、分かった。賃上げを行っても赤字で法人税がかからないため税額控除の恩恵を受けられなかった中小企業に配慮し、持続的な賃上げを促すのが狙い。
自民・公明両党は17日以降に本格化する税制調査会で議論し、繰り越し控除を認める期間など制度の詳細な設計を年末までに詰める。10年案には財務省などに慎重意見があり、政府・与党内で綱引きが続きそうだ。
政府は2日に閣議決定した総合経済対策の中で、賃上げ促進税制の強化策の一環として、中小企業の赤字法人向けに「繰り越し控除制度を創設する」と明記した。
控除期間を巡り、経産省と経済界は10年間を主張している。法人所得の赤字を翌年度以降の黒字と相殺できる欠損金の繰り越し控除制度が10年となっていることを踏まえた要望だ。これに対し、財務省は「税額控除分を長期間繰り越せても賃上げにつながるかは分からない」として短期間の措置とするよう主張。自民税調にも「10年は難しい」(幹部)との声がある。
賃上げ促進税制の別の強化策では、政府・与党は大企業が5%以上の賃上げを達成した場合に減税措置を拡大する方向で検討に入った。子育てや女性活躍に積極的な企業には税額控除額の上乗せも検討する。
大企業向けの現行制度は、前年度比で3%以上給与総額を増やした場合は増加額の15%を、4%以上の場合は25%を法人税額からそれぞれ差し引ける仕組み。賃上げ率が3%以上5%未満の企業に対する税優遇枠については縮小・廃止案も出ており、今後の税制改正論議の焦点となる。
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