事業継承の手段として、M&Aを選択する工務店も現れている。中小工務店は買収されたり、子会社になったりするパターンが多いが、社員8人の大工工務店・石牧建築(静岡県浜松市)はこのほど、同じ市内にある工務店・住まいるコーポレーションをM&Aにより子会社化した。優れた工務店を継承し、自社にはない営業・集客力や、OB顧客という“資産”を取り入れて経営の強化につなげる。
石牧建築の代表・石牧真志さんは2022年6月、取引先の地方銀行からM&Aの提案を受けた。相手は同市内の工務店・住まいるコーポレーション。面識はなかったが、長期優良住宅やZEHへの取り組みに、石牧さんは「一目置いていた」。地域の家守りのためにも、いい工務店には残ってほしいという思いから、提案を受け入れる決断をした。
100%子会社にするとの要望に従い、22年10月に全株式を取得し、出向の形で週に1~2回出社し始めた。その後、23年の1月1日で前社長のFさんが退任する計画だった。
しかし、Fさんの希望と石牧さんの考えが折り合わず、一時は膠着状態に。「Fさんの思いを十分に汲めなかったのでは」と後悔も残るが、6月の決算も迫ったため、やむなく臨時株主総会でFさんを解任。8月1日、石牧さんを代表取締役社長とする新体制が発足した。
設計力・大工の技以外で 満足度を高めていく
石牧さんが、元請け工務店の子会社化に踏み切った理由としては、受注の確保や、OB顧客宅の家守りの継承とその利益などいくつかあるが、とりわけ重要なのは・・・
この記事は新建ハウジング11月20日号1・2面(2023年11月20日発行)に掲載しています。
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