地域づくり活動の優れた事例を表彰する「2023年度地域づくり表彰」(国土交通省主催)の発表が11月9日に行われ、全国各地から推薦された41団体のうち8団体が受賞した。今年は地域の特色を生かした独自の取り組みや、地域住民が主導するケース、若者主導の提案に注目が集まった。また、インスタグラムやクラウドファンディングなどのSNS(ソーシャルネットワーク)が、地域を超えた共感を広げる手段として機能していることが特長として上がった。同表彰は1984年に始まり、今年で40回目を迎える。
総合的に最も優れた取り組みに贈られる「国土交通大臣賞」には3団体が受賞。このうち北海道の保育園留学推進協議会では、空き家やこども園の空き枠などを活用して、1週間から3週間の短期滞在が可能な「保育園留学」を実施している。
「保育園留学」では、「一時保育」「移住体験住宅」「暮らし体験プログラム」(農産物の収穫体験など)をパッケージ化して提供。体験住宅や地域の「移住センター」には、Wi-Fi設備などのワーケーション環境が整っているため、子どもが保育園に通っている間、親はテレワークを行うことができる。また地域内に道の駅があるため、滞在者による消費やふるさと納税による税収なども見込める仕組みとなっている。審査では「お試し居住を経て、今後の移住・定住へ移行する道筋の一部とも言え、若い子育て世代のテレワーカーから選ばれる地域になりうると思われる」との評価を得た。
町民みんなで空き家対策
国土づくり・地域づくりの観点から優れた取り組みである「国土計画協会会長賞」では、岡山県の倭文西まちづくり協議会が受賞。同町では空き家を活用したまちづくりのアイデアを、小学生以上の地域住民が考案する取り組みを実施している。
小学生は「空き家」を総合学習のテーマに取り上げて学習。中学生以上と大人は月に1度の「福祉」「観光・交流」「空き家」をテーマとした意見共有会や、大工経験者からリフォームを学ぶ「空き家朝活」に参加し、幅広い世代との交流を行っている。審査では、「空き家活用に小学生が参加するなど、地域のことを“我がごと”として考えられる素地が生まれている。このような取り組みは郊外住宅地・地方都市でも参考になる」と評した。
その他の受賞団体は次の通り。
■2023年受賞団体
【国土交通大臣賞】
▽保育園留学推進協議会(北海道厚沢部町):保育園留学▽(株)TREE(新潟県三条市):若者向けの商品開発や飲食店展開▽(独)アクア・チッタ(徳島県徳島市):遊休倉庫など港湾施設を飲食店や小売店にリニューアル
【全国地域づくり推進協議会会長賞】
▽おしゃれ田舎プロジェクト(長野県小諸市):空き店舗を活用して起業者支援▽神明大杉再生検討会議(岐阜県瑞浪市):古民家をお試し宿泊施設や料理屋に
【国土計画協会会長賞】
▽倭文西まちづくり協議会(岡山県美咲町):小学生以上の住民参加の空き家活用
【日本政策投資銀行賞】
▽行田市・行田おもてなし観光局(埼玉県行田市):行田「花手水」をSNSで配信し集客
【地域づくり表彰審査会特別賞】
▽鹿児島県大崎町:放置竹林を商品化して担い手育成
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