LIXIL(東京都品川区)がこのほど開催したオンラインセミナーで、PASSIVE DESIGN COME HOME(愛知県名古屋市)社長の木村真二さんが「窓上手になるための冬の日射との付き合い方」を中心に、パッシブデザインのノウハウや実例、スケッチアップの実演などについて講演。その模様を連載記事としてまとめた。
パッシブデザインに傾倒したわけ
この数年住宅業界でも高断熱化が進みましたが、高断熱化はある意味「施工技術」だと思います。あえて言えば、やろうと思えば誰でもできる技術。
一方、パッシブデザインは「設計技術」だと考えています。超高断熱にするとコストもかかりますが、パッシブデザインに習熟すれば、コストをかけて超高断熱にしなくても同等レベルの省エネ&快適を実現できる。
また、事業者目線で言えば、高断熱化は今後もボトムアップが進み他社も追随してきますが、パッシブデザインは習熟が必要なうえ設計者の個性が出しやすいこともあって差別化しやすく、なにより設計者としてやっていて楽しい。
これらは私がパッシブデザインに傾倒した理由でもあります。
そもそもを言えば、お客様は断熱性能の高い家が欲しいわけではなく、少ないエネルギー(と光熱費)で快適になる家に住みたいはずです。
これを実現するうえでは、消費エネルギーと室温を分けて考えることが大事です。
例えば、断熱性能を向上して暖かく涼しい家が実現できたとしても、消費エネルギーが減らなければ意味がありません。消費エネルギーを減らすうえで、パッシブデザイン、特に日射熱のコントロールはとても有効です。
等級7レベルの断熱性能は必要?
当社のエリアである名古屋市は東京都と同じ6地域です。6地域の場合、断熱性能等級6(G2相当)のUA値(外皮平均熱貫流率)は0.46、断熱等級7(G3相当)のUA値は0.26とされています。
当社は前述のように等級6.5とでも呼ぶべきUA値0.4前後を外皮の断熱性能の標準にしています。もちろん等級7とすることも可能ですが、断熱性能を高くするほど省エネになるわけではありません。省エネ(一次エネルギー消費量等)は断熱性能を表すUA値と冷房期の平均日射取得率ηAC・暖房期の平均日射取得率ηAHのバランスで決まり、当社はそのバランスを追求しています。
このことが今回業界の皆さんにお伝えしたいことであり、私がお客様に強調していることでもあります。
これはUA値0.38と等級6.5と呼べるレベルで、ηAC0.7、ηAH2.5を実現した当社のパッシブデザイン実例です。LIXILさんの「建て得」を利用して、太陽光発電10.2kWを載せています。
次回は、断熱性能と日射取得の関係を具体的に解説します。
《続く》
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