厚生労働省は、石綿除去技術指針に関するパブリックコメントを12月2日まで募集している。同指針は、「改正石綿障害予防規則」(2023年10月1日施行、石綿則)の適切な実施に向けて見直されたもので、石綿切断作業時の措置について意見を求めている。
新指針では▽常時湿潤化する工法または除じん性能を有する電動工具を使用すること▽剥離剤を使用する場合はリスクアセスメントの実施や電動ファン付き呼吸用保護具の着用を行うこと▽定められた基準以上の呼吸用保護具を着用すること―が追記される。意見を反映した指針は12月下旬に公示、2024年度から適用される予定。
「切断しない」「切断時は湿潤化」が基本
10月に施行された改正石綿則では、①建築物の解体・改修工事の開始前に有資格者(石綿含有建材調査者)による事前調査を行うこと、②石綿含有の有無を設計図書などの文書と目視で調査し、調査結果を3年間保存すること、③作業後、資格者が石綿の取り残しがないことを確認すること、④石綿含有成形板の除去工事は切断・破砕以外の方法で行うか、隔離して行うこと―などの対策が義務付けられた。
石綿切断作業時の措置については、これまで「常時湿潤化」を前提としていたが、有識者による検討会で実証試験を行った結果、除じん性能を有する電動工具も、粉じん発散低減効果を有しているとの結論が出た。ただし、散水しながらの電動工具の使用は感電のおそれがあるため、除じん性能のある電動工具を用いる場合は「常時湿潤化」を求めないこととなった。
さらに何らかの理由で、除じん性能を有していない電動工具を使用する場合については、電動工具に水がかからない状態にするなどの対策を行った上で、常時湿潤化による作業を認める。
剥離剤を使用する工法については、有害性による健康障害が報告されているものがあることから、リスクアセスメントの実施と、防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)または給気式呼吸用保護具の使用を原則化する。使用する呼吸用保護具は指定防護係数が300以上であるものに限定する。
電動工具使用は“やむを得ない”措置
今回の措置について、有識者検討会は報告書の中で、「電動工具による切断を推奨するものではない」と説明。切断以外の方法が技術上困難な場合の“やむを得ない”措置であることを強調した。将来的に技術の進歩により、湿潤化と同等以上の新たな技術が開発された場合は通達・採用するべきだとしている。
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