今回は少し(かなり?)マニアックな話をしようと思います。BIMの仕事をしていて様々な会議にでているのですが、その中で頻繁に出てきて多くの方が勘違いしているもしくは間違っている、IFCとDXFについてのお話です。
DXFはDrawing Interchange Formatの略で1982年オートデスク社のAutoCADで採用された2次元もしくは3次元データのためのフォーマットです。老舗中の老舗のCADです。他のメーカー製のCADもそのフォーマットを読み書きできるような仕様が通常備わっており、AutoCADを使ってなくても、例えば、「うちはVectorWorks使ってるんでとりあえずDXFで送ってください。修正しときます」が成り立っているのが現状です。
多少の文字化けとかハッチングがなんか違うとかはあるとは思いますが、そこまで業務上の問題ではないことでしょう。参考までにDXFは内部仕様が公開されてはいますが、あくまでAutodesk社のフォーマットです。
IFCはIndustry Foundation Classesの略で、中立・オープンなCADデータモデルの仕様です。ISO 16739 建設および施設管理業界でのデータ共有のための国際規格となっています。
参考までにライセンス形態はCCライセンス(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス) BY-ND 4.0であり商用利用を許可しています。つまり、こちらは完全にオープンに仕様が公開されており、誰でも利用することができます。各BIMソフトもIFCの入出力には対応しています(図1)。
ここで、相手先がRevitを利用しているとしましょう。この時、「うちはArchiCAD使ってるんでとりあえずIFCで送ってください。修正しときます」が、成立すると思っている人がなんと多いことでしょう。この点こそが間違いなのです。皆が間違う理由として、DXFのときの感覚がそのまま残っているからだと私は思っています(図2)。
BIMソフトは国際規格であるIFCに対応していながら、相互にデータのやり取りができません。一般的には理解不能な不思議な話ですよね?異なるBIMソフト間でデータをやり取りする業務は今のところ行われていません。各BIMソフトはそれぞれ独自の機能を持っており、その機能というはIFCのデータフォーマットとは切り離されたところで活躍しているといえばいいでしょうか。
例を上げると、Revitは3D部品(ファミリと呼ばれています)を作るエディターが標準で備わっております。サッシのファミリを作成する場合、サッシのワイドを1200mmから1400mmに変更した場合に“枠の見附はそのままで開口幅が広がる”という動きを部品に仕込む事ができます。
とても便利な機能です。しかし、IFCに書き出すとその機能は失われてしまいます。Revitは逆に、別のソフトで書き出したサッシのIFCデータを読み込むことはできますが、“ファミリとしてのサッシ”として読み込む事はできません。“サッシのような形状をしたもの”として取り込まれます。便利なRevitサッシとしては使えないのです。
一つのBIMソフトだけ使っている場合は特に問題はないのですが、IFCというフォーマットがデータの橋渡し役になるというのは2023年では現実化していません。教科書に載っていないので気をつけてください。
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