マテックス(東京都豊島区)は、1960~80年代にかけて製造された柄付きの単板ガラス「昭和型板ガラス(レトロガラス)」を「cycleglas(サイクルグラス)」の名でリユースし、木製室内窓「マドリノ」として販売する活動に取り組んでいる。ガラス産業が抱える課題を踏まえながらハードルの高いリユース活動を通じ、豊かな空間づくりと環境問題への取り組みを両立することを目指す。
―マドリノの開発までの経緯は。
松本:ガラス産業は明治時代に始まり、昭和以降は人口増に伴い右肩上がりの成長を続けてきた。品質を高めた画一的な製品を、いかに世の中に届けるかが最大の価値だったが、時代とともに社会の価値観が変化し、今では独自の強みや特徴を持った製品が好まれるようになってきた。ガラス産業の原動力となってきた価値観が変わりつつある。
ガラスの主な原料は、珪砂(けいしゃ)、石灰石、ソーダ灰の3つで、採掘地が限定されている。地形を変えるほどにガラスの原料を掘り起こして消費するスキームは、環境の面では好ましくない。また、砂を溶かして固める工程を経てつくられるが、砂を溶かすには1600℃以上の高熱が必要で、製造時のCO2排出量も多い。
ガラス産業の将来と社会の価値観を重ね合わせて考えた結果、市中に現存する昭和型板ガラスを丁寧に集め、リユースして流通させていく方向性を定めた。そのときに製品化したのがマドリノだ。
―市中に残っている昭和型板ガラスの総数見込みは。
松本:総務省の平成30年度住宅・土地統計調査における1951~1990年築の住宅戸数、同年までの空き家を合わせると、型板ガラスが使われていると想定される住宅の戸数は約2827万戸。自立循環型住宅モデルをもとに、型板ガラスの使用面積から試算すると約1億5800万㎡、戸数にして約790万戸に型板ガラスが残っている可能性がある。そして・・・
この記事は新建ハウジング11月10日号12面(2023年11月10日発行)に掲載しています。
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