環境・気候変動問題に対し、家づくりができることというと、高性能化による省エネルギーや、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入がまず思い浮かぶ。一方でライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からは、建材の原材料調達から製造、建設、廃棄も考えなくてはならない。住宅の高性能化に寄与する窓を製造するLIXIL HOUSING TECHNOLOGY(以下 LHT)の環境部門であるサステナビリティ企画推進部の細井健司さん、芦田亜紀さんの二人に、企業としての取り組みについて伺った。
―LIXILでは、CO2排出量を削減するためにどんな取り組みを実践しているか。
細井:弊社では「LIXIL環境ビジョン2050」の中で“Zero Carbon and Circular Living”(CO2ゼロと循環型の暮らし)を掲げ、2050年までに事業プロセス、および製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロとすることを目指している。
当面の目標としては、2031年3月期までにスコープ1、2の排出量を2019年3月期比で50.4%、スコープ3の排出量を同30%削減することを目指す。スコープ1、2の削減のためには、オフィス・工場の省エネ化、再生可能エネルギーの利用、CO2排出量の少ない燃料への転換といった施策を実行している。
また、スコープ3の削減については、LHTではやはり製品が貢献する度合いが高いと考えている。サッシ、ドア、エクステリアなど、製造時に多量のCO2を排出するアルミを使用する製品が多いが、実はリサイクルアルミを使用することで、アルミ製錬時のCO2を97%削減することができる。LIXILは、2022年に原材料におけるリサイクルアルミ材使用比率70%の「PremiAL(プレミアル)R70」を開発した。バージン材を使わずリサイクルアルミ100%を実現した国内初となる「PremiALR100」も、今期中に全てのアルミサッシ生産拠点で製造できるよう開発を進めている。
樹脂サッシの生産においても、リサイクル材の活用を進めている。市中に出回っている樹脂材の回収などハードルは高いが、他社や団体とも連携して実証実験に取り組んでいる。素材の低炭素化を推進することでスコープ3を削減し、かつ低炭素化された素材を、住宅生産者が使うことでそのCO2削減にも寄与できると考えている。
開口部製品を通じて子どもたちを支援する
―10月からスタートした「住まいから未来へつなぐプロジェクト」とは。
芦田:LIXIL環境ビジョン2050の実現に向けて「気候変動対策を通じた緩和と適応」が重点領域の一つとなっている。LHTでは2018年から、健康と環境という観点からThink Heat(シンク・ヒート)活動を展開してきたが、より「気候変動の“緩和”と“適応”」にフォーカスした「住まいから未来へつなぐプロジェクト」をスタートした。
弊社対象商品1台ご購入につき50円を、気候変動による影響を受ける国と地域の子どもたちのために寄付する。気候変動には国境がなく、あらゆる国の課題であるにもかかわらず、その責任のない子供たちに影響が及んでいることを本プロジェクトを通じて知っていただくのが狙いだ。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、CO2削減貢献につながる住宅の高性能化が大きなポテンシャルを持つと言われている。
本プロジェクトの対象を開口部関連製品としたのは、やはり開口部は緩和策として大変効果があるから。工務店の皆様に広くご参加いただくためにも、皆様にご採用いただいている窓をプロジェクトのメインに据えた。また、夏季の日射遮蔽に大きな力を発揮するスタイルシェードも、熱中症予防に取り組んできた実績も踏まえ、対象に加えている。
高性能化が進む中で資源循環がより重要に
細井:弊社では戸建市場において“高性能窓の比率100%”を目指して高性能窓の普及に取り組んできたし、業界全体でもその傾向は強まっている。住宅の高性能化により、オペレーショナルカーボン(居住時[建物利用時]のエネルギー使用によるCO2排出量)が減り、全体ではエンボディドカーボン(建設にかかる原材料調達から加工、 輸送、 建設、 改修、 廃棄時のCO2排出量)の比率が高まっていく傾向にある。
以前は、全世界のCO2排出量に占める「建設部門」の割合は、オペレーショナルカーボンとエンボディドカーボンの比率が70:30と言われていたが、2023年5月の国土交通省資料「脱炭素社会に向けた住宅・建築行政の動向」によると、オペレーショナルカーボンとエンボディドカーボンの比率は50:50となっており、エンボディドカーボンの比率が大きくなっている。断熱性はもはや当たり前で、今後、企業としては資源循環によるエンボディドカーボンの削減にも取り組んでいかねばならないだろう。
社会課題として資源循環を実現する必要性があること、開発・製造において資源循環を意識した製品を使うことが、CO2排出量削減にもつながることを、多くの人に知ってもらいたい。
いち企業としては、オペレーショナルカーボン、エンボディドカーボンの双方を減らす製品を開発、製造し、住宅のLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点からCO2削減に貢献したい。加えて、本プロジェクトを通じて、弊社製品をご採用いただいた皆様に、社会や地球環境に貢献する意識を深めていただければ、これに越したことはない。
性能・感性・環境3つを実現するLIXILの窓
“理想の窓”には、実に多様な要素が求められる。パッシブデザイン(断熱、日射遮蔽・取得、通風など)、あるいは眺望や借景など、感性的な心地よさも重要だ。加えてLIXILでは、原材料調達から製造、使用、廃棄までのトータルでCO2排出量を削減し、将来を見据えた環境性能の高さも重視。この3つが揃ってこそ理想の窓だと言えるだろう。
同社のサッシは、どんな素材でも高い断熱性を持つのが強みだ。複合サッシ・TWは、室内側の樹脂使用量を増やす設計により、さらなる高断熱を実現。トリプルガラスにも対応している。また強度にも優れる利点を生かし、フレームをスリム化して開放感のある空間づくりや、大開口への対応など設計上の自由度も高める。小さな開口部でもガラス面積を最大化できるのもメリットだ。
樹脂窓のEWも、可能な限りガラス面積を取りながら高断熱を実現できるよう設計。リサイクル材を使うだけではなく、将来、廃棄時にガラスと枠(樹脂)を分離回収できる構造にしたり、表面の化粧シートをはがさずにリサイクルを可能にするなど、エンボディドカーボンを最小限に抑える工夫にも着目したい。
(sponsored by LIXIL)
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