換気を補って空気質を保つための機器が空気清浄機。新型コロナウイルス感染症対策として注目される紫外線を用いた空気清浄機について、性能試験を監修した名古屋大学大学院工学研究科教授の堀克敏氏への取材をもとにまとめた。
換気と省エネ、低湿度のジレンマ
◉新型コロナウイルス対策として換気の有効性が言われる。一方で換気量を増やすと光熱費がかさみ、脱炭素化にも逆行する
➡このジレンマを解消するのが空気清浄機。厚生労働省も新型コロナウイルス感染症対策として空気清浄機を推奨
◉厚生労働省推奨はHEPAフィルタによるろ過式で風量5㎥/min以上の製品
➡一般的なHEPAフィルタ方式の空気清浄機は6畳間の浮遊ウイルスの99%以上を30分以内に除去。それ以外の方式で同等の結果を出せる製品は非常に少ない
紫外線でウイルスを不活化
◉HEPAフィルタ方式の泣きどころがフィルタの交換・洗浄の手間と購入費用。さらに洗浄・脱着時にウイルスが手指などに付着して感染するリスクもある
◉この点で注目されるのがフィルタ不使用の空気清浄機。堀氏が技術監修をした「キルウイルZ MAX」もその1つ。機器に取り込んだ空気に紫外線を照射して空気中の浮遊ウイルスを短時間で不活化する
➡UVランプに付着したウイルスは不活化しているため、UVランプ交換時もウイルス汚染のリスクはない
◉同機が用いたのはバクテリアやウイルスの不活化効果が高い波長253.7nmの紫外線。これを新型コロナウイルスに当てるとゲノムRNAが破壊されて不活化する
➡230nm以下の波長は空気中での吸収が大きくなり、有害なオゾンが発生する
◉紫外線の効果は光源から離れるにつれ急激に減衰。UVランプを増やせればよいが高価で設置場所も必要だ
➡特殊な反射板で紫外線を増幅させるなど効率的に紫外線を当てる機構を採用
HEPAフィルタと同等の性能を確認
◉性能試験は空気清浄機のウイルス除去性能の評価に採用される「空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能の評価試験方法」(日本電機工業会)に準拠して実施
◉無害な試験用ウイルスを約21㎥(6畳間)の空間に噴霧し、同機の稼働時と非稼働時の浮遊ウイルス減少量を測定
➡30分経過後の浮遊ウイルスの自然減衰量はごくわずか。一方、同機は30分稼働時には99%以上のウイルスを不活化除去。HEPAフィルタの製品と同等の性能を示した
◉同機は最大50㎡までの空間で使用されることを想定。50㎡の場合、180分程度で不活化99%以上の性能を発揮すると見られる
◉昨今、新型コロナウイルス感染症対策を謳う殺菌剤噴霧型製品の安全性を懸念する声がある。その点で安全性が高い同機は住宅の感染症対策として有用だろう
さらに実験を重ねていく中で、同機がシックハウスの原因であるホルムアルデヒドなどの化学物質を分解する効果もあるというデータも新たに出てきた。そこで同氏は現在、シックハウスによる化学物質過敏症に悩んでいる人を対象に、同空気清浄機を貸し出して効果を検証するモニター募集を2024年12月末まで行っている(応募者が多数集まった場合は早期に締め切る場合あり)。
■モニターに関する問い合わせは、名古屋大学大学院工学研究科・堀克敏氏まで
E-mail:khori@chembio@nagoya-u.ac.jp(@は半角)
Tel:052・789・3339
企業サイト:https://friendmicrobe.co.jp/
製品サイト:https://friendmicrobe.co.jp/business/mask/killviruz.html
本記事は、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー11月号(2023年10月30日発行)LAN・Wi-Fi・IoT etc…設備・家電[超]ネットワーク化術』(P.70)に掲載した内容を転載・一部加筆編集したものです。
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