政府は11月2日、日本経済が新たなステージに移行するための経済対策として「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定した。この中で、企業・家庭に対する省エネ・再エネ支援、地方活性化など、住宅に関わる支援策などについて触れている。
経済対策は、①物価高から国民を守る、②地方・中堅・中小企業の持続的な賃上げと所得向上、③国内投資促進、④人口減少への対策、⑤安全・安心の確保―を5本の柱として実施。
①のうち、住宅に係る物価高への対応として、▽高効率給湯器導入促進事業(経済産業省)▽既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(同)▽断熱窓への改修促進など住宅省エネ・省CO2加速化支援事業(環境省)、▽質の高い住宅ストック形成に関する省エネ住宅への支援(国土交通省)―などを示した。「住宅省エネ2023キャンペーン」と同様の住宅支援策が講じられる模様。
②の賃上げなどへの対策として、建設分野では▽資材価格の高騰を踏まえた公共事業(国土交通省)▽建設業における適切な労務費や賃金行き渡りの確保(同)▽建設キャリアアップシステムの改修(デジタル庁)―が行われる。また地方活性化への取り組みとして、▽国土計画の再構築▽地方都市の再生▽道路ネットワークの戦略的・計画的な整備▽高速道路の料金制度の見直し(以上、国土交通省)▽国産木材の供給力強化(農林水産省)▽先端半導体の国内生産拠点の確保(経済産業省)―を推進する。
省エネ住宅への低利融資も
③の国内投資への促進では、GX・DX分野への投資が行われる。住宅関連では、▽省エネ性能の高い住宅への低利融資(国土交通省)▽建築物のZEB化・省CO2化普及加速事業(環境省)▽家庭用蓄電池などの導入支援事業(経済産業省)―を実施する。
建設業界における人材不足への対応では、▽監理技術者に係る制度運用の柔軟化▽効率的な建設工事の促進事業―に取り組むとしている。
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赤字の中小企業も賃上げを 新たな支援措置
「デフレ完全脱却のための総合経済対策」では、中堅・中小企業の賃上げ対策を強化するための新たな支援措置を示している。この対策は新たな経済対策の柱の一つで、主に経済産業省が実施。中堅・中小企業が賃上げを持続的に実施するために行う価格転嫁や人手不足、生産性向上への取り組みに対し、支援を行うとしている。
まずは賃上げ促進税制を強化し、赤字を抱える中小企業であったとしても賃上げが促進できるよう、繰越控除制度を創設する。さらに賃上げの原資が確保できるよう、価格転嫁推進を目的とした価格交渉に関する指針を2023年内に策定する。指針には、受注者側との定期的な協議の場を設けること、受注者側が準備する根拠資料として、賃上げに関する公表資料を用いることなどが盛り込まれる予定。
また厳しい状況にある中小企業に向けて、日本政策金融公庫での資本性劣後ローンの運用見直し、賃上げに取り組むための金利低減措置の導入を行う。さらに挑戦意欲がある事業者の経営改善や事業再生、再チャレンジを支援するため、「支援強化会議」を設置。2023年度内に総合的対策を検討し、とりまとめる考え。
他にも中小企業の生産性向上のため、設備投資、販路開拓、情報通信機器・ソフトウェアの導入などへの支援を行う。
経産省が実施する中小企業に向けた主な制度・支援策は次の通り。
【制度】
・賃上げ促進税制の強化
・コロナ後も収益力・財務が改善しない中小企業を再度成長軌道に乗せるための「再生支援の総合的対策」
・経営者保証の提供の有無を選択できる信用保証制度
・保証審査期間短縮を通じた中小企業の資金繰り改善
【支援策】
・中小企業等事業再構築促進事業
・地域の経済と雇用の基盤を支えるための「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」
・下請取引改善・インボイス導入に係る取引実態調査のための「中小企業取引対策事業」
・インボイス制度の導入などを支援する「事業環境変化対応型支援事業」
・インボイス制度対応のためのシステム導入への支援を含む「中小企業生産性革命推進事業」
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