インターネットは暮らしを支える当たり前のインフラとなった。当たり前になりすぎてその存在を意識しないほどだ。今やあらゆるサービスがインターネットと結び付いている。それは住宅で営まれる暮らしとも無縁ではない。住設や家電はスマート化し、インターネットとつながることで利便性を競っている。そしてコロナ禍を契機にリモートワークが一定の定着をしたり、有料配信のライブコンテンツが普及するなど、住宅内でスマートフォンやパソコンを利用する時間も大幅に増えた。そんななか、住宅のあり方だけが旧態依然のままだ。
根底に横たわる設備への苦手意識
いわゆる注文住宅の分野において、インターネットというインフラを積極的に利用して、暮らしの質を高めようという提案は非常に少ない。実際の暮らしのなかでは家事や趣味の多くの部分がインターネットとつながっているのにもかかわらず、その部分の利便性を高める工夫は引き渡し後の建て主の取り組みに任せている。
住宅会社がこの分野の提案に消極的な理由は2つある。1つは単純な苦手意識。一般に設計者や現場監督などの住宅の実務者は、躯体に対する知識に比べて設備に対する知識が不足している。その中でも電気工事に対する苦手意識が強く、さらに弱電やネットワーク関連になるとお手上げ状態だ。
もう1つの理由は、前述したようにインターネットがあまりにも当たり前のインフラになっていることだ。建て主は仕事や家事、趣味などのあらゆる分野でインターネットを自然に活用しているため、設計打ち合わせなどの場面で、設備や家電などとインターネットサービスを絡めた要望を口にすることは少ない。
だが、実際に住宅を引き渡されて暮らし始めると、こまごまとした「失敗」に気づく。すでに、家づくり体験者のブログでは、クレームを含むその手の失敗談が目立つようになってきている。
明らかな潜在需要に素早く対応する
この状況は見方によっては好機とも言える。明確な潜在需要がありながら、そこにアプローチしている住宅会社が少ないということだからだ。そして、その分野の敷居は思っているよりは高くない。
これは、かつての高断熱高気密と同じだ。暮らしやすさをQ値やC値、UA値などといった数値で評価したり、現場で大工に頭を下げて気密施工を習得してもらうなど、とてもじゃないが実践する気にならない。ひと昔前はそんなスタンスの住宅会社はざらにいた。
だが、それらの取り組みが差別化要因として建て主に響き、自社の売上に変わるとなると態度は豹変。あっという間に業界のスタンダードとなった。
インターネットというインフラを暮らしの質を高めるために活用する。いわば「建築目線の IoT 化」である。・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー11月号(2023年10月30日発行)LAN・Wi-Fi・IoT etc…設備・家電[超]ネットワーク化術』(P.6〜)でご覧ください。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。