帝国データバンク(東京都港区)はこのほど、全国2万6991社を対象に実施した「健康経営」への取り組みに対する企業の意識調査の結果を発表した。有効回答企業数は1万1039社、回答率40.9%。
健康経営に「取り組んでいる」企業は56.9%で、半数以上の企業で従業員の健康管理に関する対応策を行っていることがわかった。「取り組んでいない」企業は26.7%だった。「取り組んでいる」企業の割合を従業員数別にみると、「1000人超」は82.6%なのに対し、「5人以下」は40.7%と倍以上の差がみられるなど、従業員数が多いほど割合が高くなる傾向にある。
健康経営に取り組んでいる企業からは「従業員だけでなく配偶者にも会社補助により健康診断の促進を行っている」「今の時代は企業が働きかけていかなければならない」などの声が寄せられたが、取り組んでいない企業からは「あくまで個人の問題」「言葉自体初めて聞いたほど関心がなかった」といった声があがった。
健康経営に「取り組んでいる」企業に具体的内容を聞いたところ、「定期健康診断の実施」(88.4%)が最も高く、次いで「職場の喫煙対策の実施」(47.3%)、「労働時間・労働密度など心身の過重負荷要因の改善」(43.0%)、インフルエンザの予防接種や特別休暇付与など「感染症対策の実施」(40.7%)が4割台で続いた。「メンタルヘルスに関する対策」(39.3%)も上位にあがっている。一方、「経営上の重要課題として認識し具体的に目標設定している」「すべての従業員に対する健康経営に関する教育の実施」「自社の健康経営の推進を社外へ発信している」などは1割台となった。
「取り組んでいない」企業に理由を聞いたところ、「適当な人材確保が困難」(39.0%)が最も高かった。「効果的な実施方法が分からない」(37.3%)が3割台、「費用対効果が分からない」「(取り組むための)時間確保が困難」「取り組みの成果が見えにくい」「経費がかかる」がいずれも2割を超えた。
過去1年間で「過重労働時間となる労働者」が「いる」と回答した企業は10.2%、「メンタルヘルスが不調となる労働者」が「いる」企業は21.0%だった。従業員数が多いほど割合が高くなる傾向があり、「1000人超」の企業では過重労働時間が35.5%、メンタルヘルス不調は62.0%に達した。
従業員が少数の場合は一人一人に与える影響が大きくなる一方、大手企業ではこれらへの対応が重要な経営課題となっている様子がうかがえる。企業からは「メンタルヘルスの対応に苦慮している」「メンタルヘルスによる離職は、経営上大きなリスクとなりうるため、重要であると考えている」などの声が寄せられた。
従業員の健康管理が企業の重要な経営課題と捉えられるようになってから久しく、「健康経営」の考え方に基づいた動きも高まっているが、人材確保が困難、効果的な実施方法がわからないなどを理由に取り組みが遅れている企業も3割弱にのぼる。労働者の高齢化・人手不足が深刻化するなか、企業経営における「健康経営」の重要性が一段と増していくとみられ、同社は企業の抱える課題を分析・解消するための施策が求められるとしている。
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