日本建設業連合会(日建連)がこのほど公表した「生産性向上推進要綱・2022年度フォローアップ報告書」によると、2022年度の日建連会員企業の生産性は、土木・建築を合わせた平均で9万3285円/人日で、2021年度比で1.2%の低下となった。このうち建築は2019年度にピークを迎えた後、3年連続で生産性が低下している。その原因について同連合会は、高騰する資材価格が契約済み工事に転嫁できていない状況が影響しているのではないかと分析している。
この報告書は、建設業が生産性向上に取り組むための指針として、同会が2016年に策定した「生産性向上推進要綱」のフォローアップ調査。5年ごとに取組状況の検証・評価を行っている。調査期間は2023年7月3日~27日。回答企業数は98社(回答率:69.5%)。
生産性指標は、「完成工事高(円)」「人工(人日)」「建設工事費デフレーター」により算出。2022年度は土木では2.1%向上し、9万3537円/人日となったが、建築では2.9%低下し、9万3160円/人日となっている。土木では、3D測量、UAV(ドローン)、ICT建機などのICT技術が生産性向上に寄与していると考えられる。
BIM導入で合意形成が容易に
生産性向上に欠かせないDXへの取組状況については、回答会社の約6割に当たる56社が「専属の推進部門がある」、55社が「全社的に取り組んでいる」と回答。事業所単位で個別に取り組む企業も増えている。具体的な取組事例では、「タブレット・クラウド環境」「コミュニケーション・遠隔管理ツール」「BIM/CIM・管理システム」などの活用が上がった。
このうち、特に効果的だった取り組みでは、「設計施工一貫方式の受注拡大」「BIM」「アウトソーシングサービスの活用」を挙げた企業が多かった。このうち「BIM」を導入したことによる効果については、「複雑な配筋の事前理解ができ施工性が向上した」「工事関係者の合意形成を図るのが容易になった」などがあった。
DX導入の効果については、▽残業時間削減▽4週8休の実施▽朝礼・ミーティングの時間短縮▽建設業へのネガティブイメージの改善▽経験の浅い現場職員や職人に向けた作業の可視化▽法務審査部門の業務短縮▽移動時間・待ち時間の削減―などの回答が見られた。
一方、生産性向上を推進する上での障害については、「ICT技術者など社内人材の不足」(86社・87.8%)、「導入コストの負担増」(61社・62.2%)、「施工コストの上昇」(58社・59.2%)が上位に。個別意見では、「ネット環境が常設ではなく、工事ごとに設置・撤去が必要」「類似したソリューションが台頭し、データが統一されていない」「技術提案が生産性を低下させている」などがあった。
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