LIXIL(東京都品川区)がこのほど開催したオンラインセミナーで、PASSIVE DESIGN COME HOME(愛知県名古屋市)社長の木村真二さんが「窓上手になるための冬の日射との付き合い方」を中心に、パッシブデザインのノウハウや実例、スケッチアップの実演などについて講演。その模様を連載記事としてまとめた。
パッシブデザインの5つの基本要素
パッシブデザインによって「小さなエネルギーで快適な暮らしを実現する」ための基本要素は以下の5つです。
①断熱
②日射取得
③日射遮蔽
④自然風
⑤昼光利用
①の断熱は断熱性能の向上で、ここはすでに様々な手法が普及しているのでここで解説する必要はないでしょう。
②の日射取得は、冬に日射熱をどううまく室内に取り入れて「陽だまり」をつくるか。
③の日射遮蔽は、夏に日射熱をどううまく遮って、室内を涼しくするか。
④の自然風は、いわゆる「風通しのよい家」をつくること。
⑤昼光利用は、昼間に照明を極力つけずに過ごせるよう計画すること。
ざっくり言うと、これらを計算・シミュレーションしながらきちんと設計していくのがパッシブデザインの基本です。
パッシブデザインの伝え方
これは私が考えているパッシブデザインを伝える際のスライドです(下)。
断熱性能は「ある程度高い断熱性能」としていますが、最低でも性能表示の等級6(G2)以上は必要で、私の場合は等級6.5(G2.5)を確保するようにしています。UA値で言うと0.4前後ですね。
次に、南に大きな窓をつくる。目安はLDK床面積の20%以上としています。
そして、冬は日射熱を室内に取り入れ、夏はルーバーや庇等によって日射熱を遮る。そのために計算や日照シミュレーションを繰り返し行う。ここは今回詳しくお話しします。
そして今回は詳しく触れませんが、通風や昼光利用も行う。さらに蓄熱設計や住宅設備機器の選択もきちんと行う。
これらによって「小さなエネルギーで快適に暮らす」ことができる。こうしたパッシブデザインの基本的な考え方をお客様にも伝えるようにしています。
冬のパッシブデザインの基本
冬のパッシブデザインの基本は、南の窓を大きく取り、日射熱で室内を暖めることです。大きく取る、って一体どのくらいなんだという点ですが、前述のようにLDK の床面積の大体 20% 以上と考えてよいと思います。
また南面のガラスは「日射取得型」とするのが「基本」です。この点は後で詳しく解説します。
夏のパッシブデザインの基本
次に夏のパッシブデザインの基本です。
南に大きい窓をつくると、冬は日射熱を取り込みやすくなるので良いのだけれど、夏も日射熱を取り込むと暑くなってしまうと困るので、ブラインドやルーバー、庇などで陽射しをコントロールすることで室内を涼しくします。
ちなみに庇では陽射しを50%ぐらいしかカットできません。奥行き910ミリでだいたい50% ぐらいでしょうか。
一方ブラインドやルーバーをつけるとだいたい85%ぐらいカットできます。ですから、庇よりもこういった付属部材と呼ばれるものを「窓の外」につけることが非常に重要になります。
私の場合、LIXILさんの「スタイルシェード」という製品を標準的に窓の外につけることを決めています。
ちなみに、庇を出してさらに付属部材もつけたらどうなの?ってよく聞かれるんですが、2つつけても遮蔽効果は掛け算にはなりません。
こうした冬と夏の基本を理解したうえで、計算とシミュレーションを繰り返し行いながら、省エネと快適さとコストをバランスしていくのが、パッシブデザインの基本です。
《続く》
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