内閣官房は10月19日に開いた「第19回国土強靱化推進本部」の会合で、2023年の自然災害の傾向と今後の課題について公表。各省の担当大臣はこれまでに実施した国土強靱化対策に関する報告を行った。国土交通省では河川改修による治水対策や道路ネットワークの機能強化対策などに注力。文部科学省では学校施設の防災機能強化・耐震化や文化財の防災対策などを推進している。
報告を受けて、岸田文雄首相は「開業後60年を経過した東海道新幹線に代わり、災害に強いリニア中央新幹線の整備に向けた環境を整える必要がある」と強調。沖縄の離島地域などで優先的に無電柱化支援を行うこと、被災文化財の復旧や防災対策を加速させることなどを担当大臣に指示した。
さらに「これらの対策を現場で担い、地域の守り手となるのは、建設業に携わる人々だ」と述べ、次期通常国会に向けて、建設業の担い手の確保・育成、賃上げ原資の確保などの対策を具体化するよう命じた。
防災インフラの整備など重点施策に
2023年の自然災害の傾向としては、東海道新幹線の運転見合せによる混乱の発生、台風第6号が沖縄県付近に停滞したことによる電柱倒壊や電線断線、長期間の停電被害などが課題として挙げられた。また、「防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策」などの効果が発揮される一方で、未対策箇所への対策がより一層重要になっているとしている。
そこで国土強靱化の取組の方向性として、▽防災インフラの整備・管理▽交通・通信・エネルギーなどのライフラインの強靱化▽デジタルなど新技術の活用による国土強靱化施策の高度化▽災害時における官民連携強化▽地域における防災力の強化―を挙げた。
このうち防災インフラの整備・管理については、①インフラ老朽化に対する戦略的な維持管理・更新の推進、②学校施設などの老朽化対策や避難所としての防災機能の強化、③都市公園の老朽化対策、④矯正施設・自衛隊施設の耐震化の促進、⑤一般廃棄物処理施設の防災機能の向上、⑥緊急消防援助隊の活動体制の充実強化―を重点的に実施する。
ライフラインの強靱化では、①道路ネットワークの機能強化対策(高規格道路のミッシングリンク解消)の推進、②無電柱化の推進、③災害・停電時に役立つ避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備の導入、④水道施設の耐災害性強化対策の推進―を重点施策として取り組む。
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