外国人技能実習制度の見直しを検討する政府の有識者会議(座長=田中明彦・国際協力機構理事長)は10月18日、同制度の廃止と、「人材確保」に主眼を置く新制度の創設を求める最終報告のたたき台をまとめた。未熟練労働者として受け入れた外国人を3年間で一定の知識・技能が必要な「特定技能1号」の水準に育成する方針を掲げた。外国人の中長期的な就労を促し、人手不足の解消につなげる。
新制度は、未熟練労働者として受け入れる対象を、建設や農業など特定技能と同じ分野に限定。外国人が業務の中で習得すべき主な技能を定め、試験などで評価する仕組みを導入する。技能や日本語能力の試験に合格すれば、最長5年滞在できる「1号」への移行を可能とした。不合格でも再受験のため最長1年の在留継続を認める。
人権侵害を防ぐため、働く企業を変える「転籍」の制限は緩和。(1)同一企業での就労期間が1年超 (2)技能検定・日本語能力試験の合格―などの条件を満たせば、現在の就労先と同じ分野に限って転籍可能とする。転籍前の企業が負担した初期費用は、転籍後の企業にも負担させるなど、不平等が生じない仕組みも導入する。
認可法人の外国人技能実習機構は改組し、企業の監督や外国人の支援体制を強化する。労働基準監督署と連携して重大な法令違反には厳格に対応できるようにする。外国人の受け入れ仲介や勤務先の指導を担う「監理団体」は企業の役職との兼職制限を強化するなど要件を厳格化する。
技能実習制度は1993年に導入された。途上国の外国人を日本に受け入れて、技能や知識を習得させる「国際貢献」を目的とするが、実態は安価な労働力確保に使われてきた。低賃金・長時間労働や人権侵害が生じており、有識者会議が見直しを進めてきた。今後、たたき台を基に議論を続け、年内に最終報告を取りまとめる。政府は来年の通常国会に新制度の関連法案を提出したい考えだ。
会議後、田中座長は記者団に「新制度によって人権侵害を根絶できれば、日本の外国人受け入れの重要な転機になる」と強調した。
◇最終報告たたき台ポイント
・3年で「特定技能1号」取得可能に
・対象は特定技能と同一分野
・技能・日本語試験で能力評価
・就労1年で転籍可能
・企業監督、支援体制を強化
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