東京商工リサーチ(東京都千代田区)は10月16日、「2024年問題に関するアンケート」調査の結果を発表した。有効回答は5151社。
2024年4月1日以降、これまで適用が猶予されていた自動車運転業務(トラックドライバーなど)や建設業などで時間外労働の上限規制が始まる。こうした「2024年問題」の経営への影響について聞いたところ、「大いにマイナス」が構成比19.3%(995社)、「どちらかというとマイナス」が同42.5%(2194社)となり、全体の6割(61.9%)で「マイナス」の影響が発生すると考えていることがわかった。
規模別では、「マイナス」と回答した企業が、「大企業」では同68.0%(467社)、「中小企業」では同60.9%(2722社)となり、大企業が中小企業を7.1ポイント上回った。
産業別では、10産業のうち6産業で「マイナス」の回答が半数以上となった。最も多かったのは、「卸売業」の73.0%で、運輸業の時間外労働の上限規制によって、配送コスト上昇への対応や納品スケジュールの見直しなど、流通の効率化への影響を懸念。次いで、運輸業(構成比72.7%)、建設業(同69.3%)が続く。時間外労働の上限が規制される建設業や運輸業は、残業や休日出勤で受注をこなすケースが多く、工期や納期遅れの解消に必要な人員確保のため人件費が上昇する可能性がある。
一方、「プラス」と回答した企業で、割合が最も高かったのは運輸業の8.5%だった。規制対象となったことで、長時間労働が常態化したドライバーの労働環境の改善につながることを「プラス」と捉える企業が散見された。
「2024年問題」によるマイナスの影響で、割合が最も高かったのは「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」67.9%(2079社)だった。ウクライナ情勢や円安などを背景に、エネルギーや原材料などの価格上昇が企業の業績を圧迫するなか、「2024年問題」による運賃や作業費などのコスト上昇で、さらなる業績悪化が懸念される。
建設業と運輸業では、トップが「稼働率の低下による利益率の悪化」57.5%(370社)で半数を超えた。次いで、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」48.0%(309社)、「稼働率維持に向けた人員採用による人件費の増加」44.4%(286社)と続いた。利益率の悪化のほか、「人手不足」による人件費上昇を懸念する企業も多い。また「時間外手当の減少による従業員の離職」が22.7%(146社)で、収入減が離職につながることを心配する企業も少なくない。
「2024年問題」への対策として、建設業では労務費の目安を設け、適切な価格転嫁を促す施策が進んでいる。また、2024年から現場監督になるための国家試験の受検要件が緩和され、19歳以上であれば学歴・実務経験を問わず受検が可能になる。運輸業でも、外国人労働者の在留資格「特定技能」に自動車運送業を追加するなど、人手不足を補う施策を検討。「モーダルシフト」を進め、自動車による長距離配送を減らす目標も掲げられている。
同社は、稼働率低下を防ぎ、円滑に業務を進めるには、各産業・各企業で対応するのではなく、産業界全体で連携を深め、生産性の向上を目指す必要があるとしている。
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