東京商工リサーチ(東京都千代田区)は10月16日、2023年1~9月の「建設業」の倒産動向調査の結果を発表した。1~9月の建設業の倒産は1221件(前年同期比36.7%増)で、前年同期の約1.4倍に達した。負債合計は1068億4500万円(前年同期比18.3%増)で、2年連続前年同期を上回った。
倒産件数は1月から9カ月連続で前年同月を上回り、8月は前年同月比72.5%増と今年最大の増加率となるなど、倒産の増勢が強まっている。すでに2022年の年間件数(1194件)を超えており、2016年(1605件)以来7年ぶりに1600件台となる可能性も出てきた。負債10億円以上の大型倒産は5件(前年同期6件)と前年同期を下回ったが、負債1億円未満が931件(同39.1%増)と急増し、負債合計が膨らんだ。
業種別では、「総合工事業」が485件(前年同期比25.0%増)と最も多く、次いで「職別工事業」465件(同53.9%増)、「設備工事業」271件(同33.4%増)が続いた。下請け色の濃い「職別工事業」「設備工事業」の増加率の高さが目立つ。
「職別工事業」では「とび・土工・コンクリート工事業」98件(同81.4%増)や「床・内装工事業」103件(同41.0%)など、「設備工事業」では「管工事業」121件(同24.7%増)や「電気工事業」88件(同51.7%増)などが増加。資金繰りを借入に依存している中堅以下の企業で、厳しい状況が続いている。
建設業は、建設資材の高騰や技能者の高齢化と人員不足、人件費上昇など厳しい経営環境におかれており、1~9月期の「物価高」倒産は95件(前年同期30件)、「人手不足」関連倒産は98件(同77件)と大幅に増加している。「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は93件(前年同期64件)で、返済が負担となっている企業も少なくない。また、4月の残業代の割増賃金率の引き上げや、2024年4月の時間外労働の上限規制の適用が、追い打ちをかけているとみられる。
業界の先行きが不透明ななか、高騰する資材価格や人件費・外注費のコスト負担に耐え切れない小・零細企業を中心に、倒産に追い込まれる企業が増える可能性が高まっている。
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