厚生労働省がこのほど公表した令和5(2023)年版「労働経済の分析」(労働経済白書)によると、ハローワークで最低賃金よりも高い賃金や完全週休2日などの好条件で求人した場合に、求職者の希望による紹介率が10%以上上昇する傾向が見られるとの報告があった。74回目となる今回の白書では、企業の業績や価格転嫁などの状況を踏まえ、賃上げが企業や労働者に及ぼす影響などについて分析している。
2022年の雇用情勢については、コロナ禍からの回復により、企業の人手不足感はコロナ前の水準に近づきつつあり、全ての産業で「不足」となった。特に中小企業で不足感がより強い傾向となっている。
こうした状況の中、ハローワークにおける求人への応募状況を見てみると、最低賃金より5%以上高い求人賃金を提示した場合に、フルタイム求人における3カ月以内の被紹介件数が10%程度増加する傾向が見られた。他に、完全週休2日やボーナスの条件を加えることで、それぞれ1カ月以内の被紹介件数を15%程度、3カ月以内では20~30%程度引き上げる効果があったという。
近年、求職者にワーク・ライフ・バランスを重視する傾向があることから、賃金や休暇などの条件を見直すことがハローワークからの紹介率を上げるのに効果的であるとしている。
賃上げは人材定着にも効果
賃上げが採用だけでなく、人材の定着に影響することも分かった。前職を辞めたフルタイム・パートタイム労働者について、前職を辞めた理由を尋ねたところ、「収入が少ない」「労働条件が悪い」が高い割合で選ばれていた。
他にもベースアップを実施した企業への調査(労働政策研究・研修機構調査、有効回答888社)によると、賃上げを実施したことによる効果について、約4割が「既存の社員のやる気が高まった」、約2割が「社員の離職率が低下した」と答えたという。
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