建築家の故黒川紀章さんによるメタボリズム建築の代表作「中銀カプセルタワービル」のカプセルを使ったアートスペース「SHUTL(シャトル)」が10月7日、東京都中央区築地の東劇ビル隣にオープンした。松竹が、歴史的建築物を次代に継承する目的でカプセル2基を取得。新たな文化発信拠点としての活用を目指している。
「中銀カプセルタワービル」は1972年に建てられた、個室ユニットの交換が可能なカプセル建築。改修して保存すべきとの声も高かったが、新型コロナの影響などにより維持が難しくなり、2022年4月から解体に着手した。
「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」(前田達之代表)や黒川紀章建築都市設計事務所の活動などにより、140基あったカプセルのうち23基が残された。松竹が取得したのはそのうちの2基で、オリジナルの内装を保持した状態のものと、内装を取り払ったスケルトン状態のものを新設した建物内に収納した。その他のカプセルは、和歌山県立近代美術館、サンフランシスコ近代美術館などが取得した。
「SHUTL」では、文化領域に興味のある若者が集う“開かれた場”を創出することを目指し、一般向けにスペースを開放。1室はギャラリースペースとしての利用が可能で、美術・工芸作品の企画展示や販売、映像上映などが行える。銀座・築地エリアの特長を生かし、建築・ファッション・映画・舞台芸術などを含めた幅広いカルチャーに関心を持つ、“本物志向”の層に向けた作品やプロダクトのプレゼンテーションが行える。
他に、日本文化の再定義や再評価の促進、未来の担い手の開拓を体現する実験的なオリジナル企画を開催。新進気鋭のアーティストや、注目すべき技術・アイディアを有するデザイナーや職人による作品や活動を紹介し、若手育成の機会を創出する。単に作品を公開するだけでなく、ワークショップを開催するなどして、ユーザーや鑑賞者とのマッチングを図る。
「SHUTL」のスペース情報
■所在地:東京都中央区築地4-1-8(東京メトロ「東銀座駅」5出口・徒歩3分、他)
■構造:地上1階建、鉄骨造
■内装:(壁)石膏ボード+塗装、(床)モルタル仕上+ウレタン(クリア)塗装
■営業時間:月・木・金・土・日・祝 13時~19時
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