弁護士・秋野卓生さんが、工務店が知っておくべき法律知識を毎月20日号で解説する本連載。今回は「カスハラ」、つまり顧客からのハラスメントへの対応策を解説します。
2023年6月20日、厚生労働省の専門検討会が報告書をまとめ、カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」でうつ病などを発症した場合、労働災害として扱う基準が初めて提示されました。カスハラ被害を相談しても、会社が適切な対応をせずに精神障害を発症した場合、労災と認めるという項目が含まれました。
「カスハラ」と企業の責任
カスハラとは、企業などに対する理不尽なクレーム、度を越した要求、暴言や暴行などのカスタマー(顧客、消費者、利用者など)によるハラスメント行為を言います。
住宅業界でも、従前から「悪質クレーマー」によるカスハラから会社を守るという視点はありましたが、“カスハラ被害に遭っている従業員を守ろう!”というのが今の動きです。クレーマーもお客様であるからある程度は我慢して付き合おう、という考え方も、従前はあったかもしれませんが、従業員に「カスハラに耐えろ!」と強要することは、企業にとって労災事故発生リスクにつながりかねません。
100人以上の従業員を抱える企業等であれば、労働災害の発生は保険料の増額につながる可能性がありますし(労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項)、当該従業員から会社に対し損害賠償請求がなされるリスクもあります。
これはカスハラが発生して、企業が何も対応しなかったり、事前に全く対応策を準備していなかった場合・・・
この記事は新建ハウジング10月20日号11面(2023年10月20日発行)に掲載しています。
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