2025年大阪・関西万博の開幕まで1年半に迫る中、参加国・地域が独自に建てる海外パビリオンの準備が遅れている。資材の高騰などを背景に一部の国と建設業者で調整が難航しており、政府や日本国際博覧会協会(万博協会)など関係者による支援が急務となっている。
―海外パビリオンとは。
万博に参加する約150の国や地域が独自の文化や技術を紹介する展示施設のこと。このうち、単独で建設する「タイプA」と呼ばれる方式は独創的なデザインから「万博の華」とも言われる。万博協会が設ける建物に単独や共同で出展する「タイプB」「タイプC」方式もある。現在、タイプAでの遅れが問題となっている。
―なぜ遅れているの。
コロナ禍で前回のドバイ万博が1年延期して2021年に開幕した影響で、各国の大阪・関西万博への準備が遅れた。さらに、資材高騰や人手不足で各国が想定していた予算を超えたり、国内の建設業者とのやりとりが円滑に進まなかったりしたことが追い打ちをかけた。タイプAを採用する予定だった約50カ国のうち、業者との契約にこぎ着けたのは20カ国にとどまる。
―「タイプX」とは。
鉄骨やプレハブといった基礎構造を日本側で組み立て、外装や内装は各国が行う簡易な方式だ。万博協会が今夏、タイプAの各国に提案した。10カ国程度が関心を寄せているが、実際にタイプXに移行したのは1カ国のみ。参加国の多くは従来のデザインで進めたいとの考えが強い一方で、費用面で業者と折り合いが付いていない。
―2025年4月の開幕に間に合うの。
ある協会幹部は「開幕から逆算すると12月から来年1月には着工したい」としており、デッドラインが近づいているのは事実だ。ただ、自見英子万博担当相は「開幕そのものを延期する考えはない」と明言している。政府は担当者を各国にマンツーマンで配置し、建設業者との契約交渉を支援。また大阪府・市と連携し、パビリオン建設がしやすくなるよう、資材置き場を拡充したり、車両が通る入り口を増やしたりする方針だ。
―会場建設費の増額も気がかりだ。
資材や人件費の高騰により、最大約2350億円となる見通しで、当初想定していた1250億円から1.9倍近くに膨らむ。さらに、安倍晋三元首相銃撃事件などを受けた警備強化のため、入場券収入などで賄う予定だった警備費も国が負担する方針だ。万博の意義を説明して費用増への国民の理解を得ることも、今後の国の大きな課題となる。
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