東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、2023年度上半期(4-9月)の「人手不足」関連倒産の状況調査の結果を発表した。
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上半期の人手不足に起因する倒産は82件(前年同期比164.5%増)で、前年同期の2.6倍に急増。2019年度同期の81件を超え、2013年の調査開始以降最多を更新した。要因別では「人件費高騰」が30件(前年同期比500.0%増、構成比36.5%)と前年同期の6.0倍、「求人難」が34件(同161.5%増、同41.4%)で同2.6倍と大幅に増加した。「従業員退職」は18件(同38.4%増)で、4年ぶりに前年同期を上回った。
産業別では、コロナ禍前から慢性的な人手不足に陥っている建設業が19件(前年同期比171.4%増)と2.7倍に増加。同じく19件の運輸業は6.3倍に急増した。不動産業は前年同期ゼロだったが1件発生した。業種別では、建築リフォーム工事業が3件、とび工事業、内装工事業が各2件、土工・コンクリート工事業、タイル工事業、塗装工事業、不動産代理業・仲介業が各1件だった。
コロナ禍では経済活動が縮小し「人手不足」関連倒産は低水準で推移したが、経済活動が本格化すると人手不足が顕在化した。人材確保のためには賃上げが不可避となっているが、物価上昇による収益負担や賃上げのコストアップが、経営体力がぜい弱な企業の資金繰りを圧迫し、倒産するケースが増えていることがわかった。
10月から最低賃金が引き上げられ、首都圏や愛知、大阪では1000円を超えるが、時給1000円以上でも人手不足解消につながらない企業もあることから、人件費上昇の影響はさらに広がるとみられる。同社は、資金力が乏しい企業では新たな人材確保が難しく、年間の「人手不足」関連倒産が過去最多を更新する可能性があると指摘している。
同調査は、2023年度(4-9月)の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出・分析した。(後継者難は対象外)
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