化粧品会社や電機メーカーが今夏、自社技術を用いた熱中症対策の製品やサービスの実証実験を行った。熱中症による搬送者数はここ数年5万~7万人前後で推移し、対策は喫緊の課題だ。地球温暖化に伴い、30度以上の真夏日にとどまらず、35度を超す猛暑日も珍しくないなど、暑さは深刻さを増す。実証実験を行った社は早くも来夏を見据え、実用化を目指している。
ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の研究開発を担うポーラ化成工業(横浜市)は、熱中症リスクを判定する人工知能(AI)システムの実証実験に取り組んだ。体調不良になった顔の画像から深層学習したAIを活用。タブレット端末に3秒ほど顔をかざすと、寝不足や運動後の疲労などを割り出し、気温や湿度と統合してリスクを判断する。
豊田高専(愛知県豊田市)が開発したAIを基盤とし、精度は80%ほどという。ポーラ・オルビスが培ってきた肌分析技術も活用し、多角的に判定する方針だ。実証実験では建設現場に設置し、作業員に利用してもらった。ポーラ化成工業研究所の笠原薫さんは「作業員の出入りが多い現場で、水分補給や休憩を促すきっかけにしてもらえれば」と話した。
シャープは、東京都三鷹市やベンチャー企業のバイオデータバンク(東京)とともに、中学校の部活動で実証実験を行った。主成分が水の「適温蓄冷材」で、熱中症の原因とされる深部体温の上昇を抑える「プレクーリング」の効果や運用を検証した。
部活前に適温蓄冷剤で手のひらを通る太い血管を冷やし、熱中症リスクを低減する。氷点下などの過酷な環境でも鮮明に映すシャープの液晶技術で融点をコントロールし、しばらく握っていても不快感がない10度に調整した。深部体温の上昇を検知するバイオデータバンク社の腕時計型器具とセットで事業化を目指す。
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