LIFULL(東京都千代田区)の社内シンクタンク「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)総研」は9月29日、研究報告書「地方創生の希望格差~寛容と幸福の地方論Part3」を発刊し、研究成果を解説するウェブ発表会を開いた。島原万丈所長はアンケート調査結果の分析により、居住する地域の未来に希望が持てるかどうかが、地方創生の鍵になると結論づけている。同社による47都道府県の「地域の希望」ランキングでは沖縄県が1位となっている。
LIFULL HOME’S総研では2021年から毎年、地方創生に関する調査結果を発表。第1弾「地方創生のファクターX」では、住民の寛容性と幸福度、人口増減率の相関関係について、第2弾「“遊び”からの地方創生」では、居住地に存在する「遊び」の数と個人の幸福度の関係について明らかにしている。
そして第3弾となる今回は、居住する地域の未来への希望が、地域にどのような効果をもたらすのか、地域に希望を持つためにはどのような環境があれば良いのかを、さまざまな角度から考察した。地域に対してどれだけ希望を抱いているかについては、「10年後の住んでいる地域の見通し」について、「暗いと思う」「どちらかといえば暗いと思う」「どちらかと言えば明るいと思う」「明るいと思う」の中から近いものを選んでもらっている。
「定住・離脱意向」の項目では、地域への希望が高い人の85.8%が今の地域に「住み続けたい」と答えたのに対し、希望が低い人ほど定住意向が低くなり、離脱意向が高くなる傾向が見られた。島原所長は、「未来に明るい希望が持てない地域から人口が流出することを示唆するものだ」と分析している。
人口減少率と「地域の希望」に相関
「地域の希望」を都道府県別に見ると(※カッコ内は指標得点)、1位「沖縄県」(13.12)、2位「福岡県」(12.53)、3位「東京都」(12.41)、4位「神奈川県」(12.40)、5位「愛知県」(12.21)が上位にランクインした。下位は、43位「新潟県」(10.94)、44位「山形県」(10.90)、45位「青森県」(10.72)、46位「徳島県」(10.70)、47位「秋田県」(10.29)という結果になっている。
47都道府県の人口増減率と地域の希望との相関関係を見ると、0.873と非常に高い数値が示されており、人口減少率が高い地域ほど地域の希望が低くなることが証明された。
「ビル開発」よりも「おしゃれなリノベ」を
人口減少率が高い地域で「地域の希望」を見出す手段についても考察した。人口は減っているが希望は高いグループと、人口が減っていて希望も低いグループが何に着目しているかを調べ、回答結果に差が大きいほど「地域の希望になり得る」と仮定。差の大きい項目を抜き出している。
まず、地域の固有性を評価するポイントとしては、▽古くからの歴史や伝統がある▽老舗のレストラン・食事処がある▽文化芸術に親しむ環境がある▽昔からの産業や商売が今でも元気である―などがあり、これらが地域の希望にもつながることが分かった。一方で、「山・海・川などの自然がある」は、評価のポイントとはならなかった。
同様にまちづくり(まちの動き)については、▽道路や公園などみんなが楽しめる公共の場所が整備されてきた▽リノベーションしたおしゃれなお店や施設が増えた▽子育て支援の施設やサービスが充実してきた▽子連れでも気兼ねなく楽しめるお店や場所が増えた―がポイントとなった。「ビルやマンションなどの都市開発」よりも、「リノベーションしたおしゃれなお店」の方が、評価の差が大きいことが注目される。
他にも、地域の未来の希望を作るポイントとして、①都市のコンパクト化、ウォーカブル化でにぎわいをつくること、②公共空間の整備やまちづくりイベントを行い、まちに変化を起こすこと、③外国人、ジェンダー平等など多様性を重視し、ひとの変化を高めること、④住民にきめ細かい情報発信を行い、政治・行政のPR体制を強化すること―などを挙げている。
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