LIXIL(東京都品川区)がこのほど開催したオンラインセミナーで、大橋利紀建築設計室/livearth(リヴアース、岐阜県養老町)社長の大橋さんが、住宅設計の風と光の扱い方や、心地良さを見える化するという視点で、窓に注目した考察を講演した。その模様を連載記事としてまとめた。
第1回:カギは「風景の扱い方」 ”窓上手”の設計者になろう
第2回:大橋流 “間接的”に光を導く「導光手法」の具体例
第3回:快適性も冷房エネルギー削減も叶える自然風利用の極意
第4回:《大橋利紀》心地よさの見える化―日射遮蔽5ステップ
ここまでは、光や風の「心地よさ」を定量評価し、わかりやすく視覚化する手法を紹介してきましたが、ここからは「その先の豊かさへ」をテーマに数値化できない価値をいかに追求するかをリヴアースの事例を交えながら解説します。
事例解説「夕暮れの家」
敷地の周辺状況
▽愛知県(6地域)の都市型立地。冬場の日射量が多い温暖地域で、近くに一級河川が流れる。
▽敷地は南西面(ほぼ西向き)に道路があり、道路以外の3方は隣家が近接する36坪の狭小地。
▽2階の窓からは河川とその上空に広がる南西側の風景を一望できる。
▽観察・聞き取りをしたところ、周辺に2階リビングの家はなく、1階リビングのカーテンが昼間から閉まっている家が多い。
日影シュミレーション(4時間以上日影になる部分を表示)で建物の配置を検討
《冬季》
12月:敷地の水平投影面70%ほどが4時間以上影になる
1月:敷地の水平投影面70%ほどが4時間以上影になる
2月:敷地の水平投影面60%ほどが4時間以上影になる
《夏季》
8月:敷地の水平投影面65%ほどが4時間以上影になる→日射熱を遮蔽できるので助かる
配置計画・方針
▽建物を真南に向けるのは難しく、狭小地のため敷地全体に建物を配置する必要があるため、南西面道路と並行に配置し、南西側の絶景を眺める2階リビングを採用。駐車スペースを1台確保。
▽夏の開口部の西日対策を重点的に行う。
▽軒の出を1200強、屋根を5寸勾配とし、「夏の日射熱対策」と「冬の日射熱取得」と「小屋裏利用」の3つに複合的に対応する住まいとする。
平面図
▽《赤い矢印》は冬場の日射取得と風景、光を楽しむ窓、《青い矢印》は風を抜くための窓。
▽隣家とは手が届くほど近接しているため、風景は楽しめないが、風を抜くことだけを目的にした窓を北・東・南面に設定した。
《続く》
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。