帝国データバンク(東京都港区)はこのほど、「脱炭素社会」が企業へ及ぼす影響について調査した結果を発表した。調査対象は全国2万7768社で、有効回答企業数は1万1265社(回答率40.6%)。脱炭素社会に関する調査は、2021年6月、2022年7月に続き3回目となる。
脱炭素社会の進展が自社の事業に「プラスの影響」があると回答した企業は14.1%で、過去の調査(2021年14.8%、2022年14.0%)から進展はみられなかった。一方、「マイナスの影響」があると回答した企業は、17.3%と前年比2.2ポイント減となったものの、「プラスの影響」を3.2ポイント上回った。「影響はない」(33.8%)、「分からない」(34.9%)が合わせて7割近くを占め、脱炭素社会の進展に実感が乏しいことがうかがえる。
「プラスの影響」がある企業を業種別にみると、最も高かったのは「再生資源卸売」(29.4%)で、次いで「農・林・水産」(25.2%)、「家電・情報機器小売」(25.0%)が続いた。「マイナスの影響」では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」(49.8%)が最も高く、全体(17.3%)を32.5ポイント上回った。次いで「輸送用機械・器具製造」(38.1%)、「自動車・同部品小売」(36.9%)、「運輸・倉庫」(33.0%)が続き、自動車関連業種で「マイナスの影響」が目立つ。企業からは「脱炭素社会の資源循環の輪の1つが自社の事業そのもの」(再生資源卸売)という声がある一方、「大打撃、致命傷になるが、世の中全体を考えたら脱炭素化は重要課題だと思う」(ガソリンスタンド)など、マイナスの影響を感じつつも取り組まなければならないという意見も聞かれた。
従業員数別では、規模が大きくなるほど「プラスの影響」が高くなり、「1000人超」では35.0%を占めた。一方、規模が小さくなるほど「影響はない」「分からない」の割合が高まる傾向がみられた。規模が小さい企業からは「対応を迫られたらやるが、現在は予定なし」(不動産)といった声が聞かれた。
同社は、今回の調査で「マイナスの影響」が「プラスの影響」を上回り、それ以上に「影響はない」「分からない」が上回ったことから、脱炭素社会の進展による各社への影響が出るのはしばらく先になるとみている。海外企業を中心にサプライチェーン全体で「脱炭素経営」に取り組む姿勢が広まるなか、国内企業も規模にかかわらず脱炭素への取り組みが求められ、中小企業に至るまでのすそ野の広い仕組みづくりが必要だとしている。
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