皆さんこんにちは。新潟家守舎の小林 紘大です。連載第三回目となる今回の記事からは、よりフランクな私の視点で「エクセレントチーム」の実例とメリットをお伝えしていきます。今回は、注文住宅をメインとする新潟市の工務店m-studio(新潟市、人見美奈子社長)の事例について解説。開業からこれまでのサポートは、まさに“エクセレントチームの強み”を活かせた成功例だったと言えます。
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前回までのおさらいですが、私が提唱している「エクセレントチーム」体制。これは自社だけでなく、社外の専門スキルを持った人材との協業体制を指します。
エクセレントチームの強みは、
・それぞれの得意分野を活かせる
・スピード感がある
・つねに組織をアップデートさせていける
の、大きく分けて3つです。
たとえばSNS活用など、社内の人員では知見が足りない、リソースがさけない場合に有効です。「やった方がいいのは分かってるけど、なかなか手がつけられない」。そんな状況を打ち破って、工務店を進化させるための画期的な体制です。
m-studioは、社長の人見美奈子さんが2023年の2月に独立したばかりの工務店です。人見さんは開業前から、私に独立にあたっての相談をしてくれていました。
当たり前ですが、独立って、不安ですよね・・・。そう、私自身も不安しかなかったですから。気持ちは痛いほど理解できます。
「どうやって集客しよう?」「宣伝の方法は?」「そもそも建築業許可はきちんとおりるんだろうか?」…など、考えるべきことはつきません。
不安を少しでも取り除き、m-studioが良いスタートダッシュを切るために。私だけでなく他のメンバーも一緒に、エクセレントチームでの開業サポートをしました。
フリーランスらが協業して業務分担。 つねに前向きな刺激が生まれる
人見さんとプロジェクトマネージャーである私が提携し、WEBディレクターとインスタ運用担当をくわえた4名がメインメンバーとして、エクセレントチームを発足しました。
いずれもフリーランスや個人事業主のため、スピード感を持ってアイデアを形にしていくことができます。
取り組む業務に応じて、他のパラレルワーカーやフリーランスのクリエイターと協業していくことでどんな業務にも対応できるのがこの体制のメリット。そのため、人見代表との契約は毎月サブスクリプション形式で費用をいただく流れにしました。
チームでサポートした内容はこちら。
・開業に必要な事務サポート
・ディスカッションパートナー(壁打ち相手)としての対応
・m-studioのHPリニューアル
・Instagram運用強化(フォロワーは当初の倍に!)
・オープンハウス実施のための広報戦略提案、フライヤー、DM制作
Instagramの運用は、メンバーで意見を出して「物件が出来ていく過程をリアルタイムで見せる」「人見さんの着眼点、人となりを出す」方向性に定めて運用したところ、フォロワー数は当初の倍に増加。
HPは、WEBディレクターが制作の中心となりデザインを刷新したことで、以前より格段に見やすく。さらに私が「もっといい家、あります。」というコピーをつけさせてもらい、m-studioのスタンスを強く打ち出す形へとリニューアルしました。
工務店は家づくり以外にリソースを割くのが難しい
これを読んでくださっている工務店の方は、共感してくださる方も多いかと思いますが……。
中小の工務店は特に、家づくり以外の業務にリソースを割くのは難しいんですよね。基本的に少数精鋭で、普段の業務もギリギリの人員で回している企業がほとんどです。無理してやっても、継続できません。
私自身、地域工務店で働いていた当時者のひとりとして、リアルにその状況が理解できます。
人見さんは、お見積りから契約、着工、引き渡し、そしてメンテナンスまで一貫してご自身で対応するというこだわりがありました。そこはもちろん、こだわり抜いてほしかった。
「人見さんのこだわりと熱意は、きっちり施主さんたちに届けてください。
家づくり以外の業務は、チームメンバーである私たちも一緒に受けとめます!」という心持ちで、伴走していきました。
こうやって文字にすると、我ながらアツいですね(笑)。でも、社外のメンバーと協業すると新鮮で刺激をもらえるから、前向きでアツい気持ちが湧いてきます。こんな風に仕事に向き合えることも、エクセレントチームの大きな魅力です。 にしていきたい。
実務だけでなく、メンタルサポートまで
エクセレントチームは、基本的には個人事業主やフリーランス同士のやりとりですから、上司や会社からの指示で協力関係を結ぶわけではありません。サポートする側もされる側にも、リスペクトのリレーションシップが生まれ、学び、高め合うことができます。
今回、新潟家守舎として大きな経験値となったのが、開業のための事務的なサポートです。
工務店が開業するにあたって、1番のハードルは「建築業許可の取得」です。
・詳しい行政書士が限られている(行政書士だから知っているとは限らない)
・取得までをコンサルに丸投げすると莫大な費用がかかる
・設立後すぐに取得したい場合、まとまった資本金が必要
これらの状況を理解した上で、適切な行政書士の方を紹介し、事務処理のサポートを行いました。経験値が溜まったことで、今後コンサルティングに携われる可能性が広がったと感じています。
それから、ディスカッションパートナーになることで、知見が溜まったのも学びでした。
人見さんだけでなく、開業したての頃は誰しも「なんでもできる!」と思うんですよね(私もそう思っていました)。
「あれもやりたい!」「これもやりたい!」という気持ちを、壁打ち相手として受け止めさせてもらう。
その上で・・・
「ぜひ、こんな風にやってみましょう!」
「それって今やるべきでしたっけ?」
「その資金、こっちに回した方がよくないですか?」
と、それぞれ提案させてもらう。あくまで否定はせずに、ともに当事者のひとりとなって考えるスンタンスです。
こうすることで意思統一もできますし、人見さんの思考の整理にもなります。
具体的な相談ではなくても、開業当初は何かと不安に感じるタイミングです。「大丈夫、絶対仕事きますよ」と声をかけて、成約したら「やったね!」と一緒に喜んびながらやってきました。人見さんからは「とにかく不安だらけの中で、本当に心強かった!」とのお言葉をいただきました。
苦手や足りないリソースを補えば可能性は無限に広がる
人見さんに「正直、このエクセレントチーム体制、どうですか?」と聞いてみたんです。
すると「お世辞抜きで」と前置き付きで「打ち合わせのたびにスピーディーに物事が進んでいくので楽しい」と。「社外の力を借りるとしても、広告代理店やコンサル会社はここまでやってくれない」とも言っていただけて、チームの一員として嬉しいかぎりでした。
繰り返しになりますが、エクセレントチームは会社同士ではなく個人と提携する分、契約書を交わすだけではなくより細かな意思疎通が必要になってきます。
それぞれが役割を理解し、意思と意欲を持って、知見をシェアしながら活躍できる。そんな、信頼関係で結ばれたエクセレントチームを確立するために気をつけているポイントは、次回以降の記事で改めて紹介させてください。
建築スキル、経営スキル、営業スキル、すべてを備えたスーパーマンでなくても、いい家をつくれる方はたくさんいます。
そういう方が家と向き合う時間をとるために、苦手な部分や手が回らない部分はチームで前向きに補っていくべき。そうすれば、可能性はどんどん広がっていきます。
これを会社の中で内製するのはとんでもなく時間がかかるので、エクセレントチームが効くんです。これから開業される方や、組織をより進化させたい工務店の方はぜひ一度「エクセレントチーム」を導入してみてください。
そして、新しい取り組みへのより良いスタートダッシュを切りましょう!
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