国土交通省は9月19日、建設業で早急に対応するべき施策を盛り込んだ「中間とりまとめ」を策定して公開した。今後、建設業法の改正なども視野に、適切に建設工事が実施される環境づくりに取り組む。今回のとりまとめでは、不当に低い代金での請負や著しく短い工期での受注などについて、発注者だけでなく受注者側にも勧告を行うことを明記した。
「中間とりまとめ」は、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が議論した内容を取りまとめたもの。2018年6月に公表していたが、その後、建設業を取り巻く環境が激変したため、2023年5月以降に改めて審議を行った。今回は、①請負契約の透明化による適切なリスク分担、②適切な労務費の確保や賃金行き渡りの担保、③魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上―に重点を置いている。
リスク時の分担を明確に
総価一式方式などの請負契約では、受注者が工事期間中に発生する材料価格の変動リスクなどを一手に引き受けるため、発注者が予備的経費の内容を把握することが難しく、リスク管理が不透明となっていた。さらにリスク発生後、リスク分担が適切に行われなかった場合に、不良工事の発生や工事に関わる業者の経営悪化などが懸念されていた。
そこで見積時などのタイミングで、受注者から発注者にリスク情報を提供することを義務化することとした。リスク発生時の分担についても、事前協議を行うよう促す。また請負契約時に、資材価格の変動などを踏まえた予備的経費を記すことも要件に。オープンブック・コストプラスフィー方式の標準請負契約約款を採用することで工事原価を開示し、請負契約の透明性を高める。
受注者・発注者とも勧告対象に
市況の影響を受けやすい労務費の確保に向けては、標準的な労務費を中央建設業審議会が勧告。施工不良や賃金が行き渡らない原因となりやすい、不当に低い代金で請け負う行為についても、受注者・発注者を問わず指導・勧告の対象とする。技能労働者の賃金については、CCUSのレベル別賃金目安に基づいて、企業内で適切に分配するよう求める。
週休2日の実現や、2024年4月から適用される罰則付き時間外労働規制への対応のために、十分な工期の確保が必要となることも予想される。そこで受注者側の発案による著しく短い工期での請負を禁止。建設工事現場を適切に管理するための指針を作成し、指針に即した現場管理を求める。監理技術者の専任制度の合理化を図り、遠隔施工管理などにより監理技術者が2つの専任現場を兼任することを可能とする。
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