全国建設業協会(東京都中央区、奥村太加典会長)は9月15日に公表した「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)についてのアンケート調査結果の中で、地域建設企業が災害発生時に「地域の守り手」としての役割を果たすための課題について意見を求めている。
同協会は災害対策基本法に基づく指定公共機関として、内閣総理大臣から指定を受けており、大規模災害発生時には応急措置・災害復旧の実施、被害情報の収集・伝達、公共施設の応急対策などの役割を担っている。直近3年間では会員の約半数が、応急対応工事を含む災害復旧工事を受注している。
しかし、現状として「高齢化が進んで経験豊富な人材がいなくなり、対応レベルが下がっている」との声が上がっている。また、人件費や資機材の維持費が掛かり、経営的負担が大きいことから、「建設資機材保有の建設業者が評価される枠組みがなければ、初動対応できる建設業者が廃業を余儀なくされる」との声もある。
例えば除雪作業について。会員のうち56.4%がこの5年間に「除雪作業を受注した」と答えたが、そのうち黒字だったのは64.3%。29.9%は「利益なし」、5.7%は「赤字」という結果が出ている。また約3割が人員・機材を維持する上で必要な受注量が「不足している」と回答。特に豪雪地帯である北陸ブロックで「不足している」との回答が目立った。
除雪用の機材を維持するためには定期的なメンテナンスが必要となるが、年ごとに降雪量が異なるため「機材の維持が難しい」のだという。要望する施策として、▽人員・機材維持への最低保証▽待機補償費▽重機購入に対する助成金制度▽時間外労働手当▽発注者による除雪機械の貸与―などが挙がっている。
233市町村で「地域の守り手」不在
全国で会員企業が不在の市町村があることも問題となっている。アンケート結果によると、2023年7月現在、32都道府県233市町村で会員が不在となっている。このために▽災害時に複数機関から災害対応依頼があった場合に、発注者の災害対応指示の曖昧になる▽国・県・市町で地元建設業者の取り合いになる▽会員企業が少ないために支援体制が取れない―などが懸念されている。すでに不足している人材が災害対応に割かれることも課題となっている。
今後も「地域の守り手」として持続性を確保するために、どのような方策が必要かについては、「担い手の確保(新規入職者の確保)・定着」(90.1%)との回答が最多に。次いで「事業量の確保」(77.3%)、「生産性向上」(43.4%)、「担い手の処遇改善(賃金の行き渡り含む)」(40.2%)の意見が多かった。
同調査は、全国の会員企業2524社を対象に実施したもので、調査期間は2023年6月~7月。運用指針の効果の測定・評価に加え、各都道府県協会や各都道府県協会所属の会員企業の状況を把握し、課題などを洗い出す目的も兼ねている。
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