全国建設業協会(東京都中央区、奥村太加典会長)が9月15日に公表した「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)についてのアンケート調査結果によると、受注状況が「悪くなってきた」「悪い」と回答した会員の割合が半数近くに達した。工事発注量の減少や技術者不足により、受注したい意欲はあっても受注できない状況となっていることが、調査結果から明らかになっている。
受注状況が「悪くなってきた」と答えたのは全体の37.8%で、「悪い」は8.4%。中でも中国ブロックで「悪くなってきた」「悪い」と答えた割合が目立っている。一方、利益面については「悪くなってきた」「悪い」との回答が全体の44.1%を占め、北陸・中部ブロックでは5割を超えた。
受注状況が悪化した原因については、8割近くが「公共工事の発注量の減少」と回答。次いで、「技術者の不足」(56.9%)、「競争の激化」(49.7%)、「民間工事の発注量の減少」(32.3%)が多かった。個別の意見では、「慢性的な技術者不足が続き、受注をあきらめている」「受注しても半年以上着手できない工事があり、技術者一人を専任で配置すると採算がとれない」「建築資材の高騰から発注の見合せが生じている」などがあった。
利益面でも、「人材確保のための福利厚生が必要となり、労務費や経費が増大している」「協力会社の施工見積りが設計価格を超えている」などの回答が目立ち、人件費の増加と資材の高騰が企業の利益を圧迫している様子がうかがえる。
資材価格の高騰に伴う価格転嫁については、「転嫁しすぎると失注につながるため、経費削減により対応せざるを得ない」「見積書の有効期限を短くして対応している」「下請から価格転嫁の要請を受けるが、発注者が対応しないため元請が厳しい状況となる」といった意見が見られた。
「工期は適正」だが余裕求める声も
民間工事で適正な工期が設定されているかについては、「適正」「概ね適正」との回答が81.2%を占め、建設業法に基づく「工期に関する基準」に沿った工期が概ね設定されている様子。一方で、「一部不適正」「不適正」との回答も見られ、「働き方改革で工期設定が厳しい」「土曜日を稼働日として対応しないと厳しい案件が多い」などの意見があった。
適正な工期設定の実現に向けては、「工事準備期間、書類作成期間を工期に反映してほしい」「悪天候や働き方改革にも対応できる余裕が必要」「受注者が工期を設定できる(フレックス)発注にしてほしい」などの意見があった。罰則付き時間外労働上限規制の適用が来年4月に迫っており、適切な工期設定を行うためには発注側の理解が不可欠となっている。
同調査は、全国の会員企業2524社を対象に実施したもので、調査期間は2023年6月~7月。2020年に中央建設業審議会で「工期に関する基準」の実施が勧告されたことを踏まえ、運用指針の効果を測定・評価するほか、各都道府県協会や各都道府県協会所属の会員企業の状況を把握し、課題などを洗い出す目的も兼ねている。
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