国土交通省が19日公表した基準地価で、熊本県大津町の駅近くにある商業地の地点は32.4%上昇し、工業地や住宅地を含めた全用途で伸び率が全国1位となった。大津町は半導体受託製造最大手台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建設中の熊本県菊陽町に隣接する。新工場建設に伴う地価の押し上げ効果が、菊陽町だけではなく、周辺にも広がっていることが示された。
次世代半導体の開発・製造を目指すラピダス(東京)が工場建設を表明した北海道千歳市でも地価上昇効果が出始めた。
熊本県菊陽町のTSMC工場建設地に近い工業地の地点は前年、上昇率が全用途で全国1位となった。今年は同町の商業地に加え、隣接した大津町の工業地や商業地でも地価が大幅上昇した。TSMCが2021年に進出を表明したのを機に、近隣で事業展開を目指す関連企業が相次ぎ、事業所や住宅、店舗など幅広い用途で不動産需要が高まっている。地元の不動産会社の担当者は「菊陽町だけでは用地は足りない状況だ」と話す。
北海道千歳市では今年2月、ラピダスが工場建設を発表。札幌市にアクセスしやすい千歳市は住宅地として人気が高まっている地域だ。ラピダスや関連企業の事業所需要などに押し上げられ、JR千歳駅周辺の住宅地の地点は30.7%上昇して伸び率は住宅地として全国1位、駅周辺の商業地の地点も同様に跳ね上がり、商業地として全国2位となった。
政府は半導体を経済安全保障上の特定重要物資に位置付け、生産体制の強化を進めている。菊陽町のTSMC工場に最大4760億円、千歳市のラピダス工場に3300億円の支援を決めた。TSMCなど半導体産業進出に伴う熊本県内への経済波及効果を、31年までの10年間で約6兆8500億円と金融機関が試算するなど、消費拡大や雇用創出への期待は大きい。
ただ、地価上昇には「いいことばかりではない」(菊陽町関係者)と警戒する声もある。過度な上昇が続けば、地域住民が家を建てたり借りたりするのが困難になるからだ。また、TSMCの工場建設地周辺では、すでに交通渋滞が深刻で、来年の工場稼働後、さらに悪化するとの懸念も強い。
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