社会課題解決のための調査・研究を行う(一社)日本プロジェクト産業協議会(進藤孝生会長、河田惠昭防災委員長)はこのほど、谷公一・内閣府防災担当大臣および榊真一・国土交通審議官に対し、首都直下地震の復旧・復興に関わる提言書を手交した。この中で都外への労働人口流出を防ぐため、事前に中小事業所の耐震化や仮設住宅候補地(空き家)の選定、旧耐震住宅の移転などを進めておくべきとの考えを示した。
谷大臣に提出した提言書では、首都直下地震による被害想定や関東大震災・東日本大震災の教訓などをもとに、全労働人口の8割を雇用する地場の中小企業の復興を迅速に進めるための方策を提案。①中小企業の事業所耐震化、②ライフライン耐震化と被災者住宅の域内での確保、③燃料・原料と電力の安定供給のための湾岸機能強化、④公共交通機関の迅速な復旧、⑤物流機能の保持とサプライチェーンの継続―の各項目について、事前の対策を求めた。
中小事業所耐震化については費用負担などの問題があり、特に工場での耐震化が遅れていると指摘。住・工・商一体の都市再開発事業を誘導することで災害に強いまちづくりを推進するべきだと述べている。また、被災による労働人口の都外流失を防ぐため、普段から応急仮設住宅候補地の選定を行い、仮設住宅として利用可能な空室を地域不動産会社と共有することを提案した。
旧耐震住宅買取補助で移転促進
榊審議官に提出された提言書では、災害廃棄物の3R(削減・再利用・資源再生)を前提とした処理や自動運転技術による廃棄物の収集・運搬を提案。土地建物の流通促進により高齢者らが住む旧耐震住宅を削減するよう求めている。
耐震性の低い住宅・事務所については、都の政策などにより耐震改修の促進が求められているものの、人が居住していることから耐震改修が進められないといった現状もある。そこで国が主体となって、旧耐震木造住宅買取費用や宅地建物取引の媒介報酬などへの補助、サービス付き高齢者向け住宅への移転支援、高規格堤防整備などを行うように求めた。解体後の低未利用地については、災害廃棄物の地域仮置場としても活用できるとしている。
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