大成建設(東京都新宿区、相川善郎社長)が施工する「世田谷区本庁舎等整備工事」(1期~3期)で工程の遅延が発生している問題で、世田谷区(保坂展人区長)は違約金7億7800万円に加え、損害賠償金を請求する方針を明らかにした。9月8日に開いた記者会見の中で明らかにしたもの。
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さらに2期・3期工事について、合わせて14.5カ月延伸が見込まれていたところ、学識経験者で構成される工程検証委員会の検証結果により、2.75カ月の工期短縮が図れることが判明した。最終的な工期については大成建設側と協議の上、2024年3月下旬を目途に決定する。
相川社長は7月に来庁した際、「本社、支店の全力を挙げて工程管理を徹底する。違約金や賠償金については誠意をもって対応する」と述べている。
「見えない被害」にも賠償請求
世田谷区は、請負契約約款に基づき2つの違約金を請求。このうち「1期工事完成日の延伸に伴う違約金」は、工期の延伸を認める代わりに年3%の違約金として約3億6300万円を求める。もう一方の「技術提案不履行に伴う違約金」は、入札時に示した技術提案のうち「事業特性を考慮した施工体制」「全体および各工期の設定」などの項目が不履行となったことから、約4億1500万円を請求する。
加えて、1期工事完成の延伸に伴う損害賠償や工程の遅延により失われた利益など、工事完成日延伸に伴う見えない(数値化が難しい)内容の損害賠償についても請求する考え。具体的な請求額については検討中だとしている。
2期・3期工事の延伸については、大成建設側の提案と工程検証委員会による検証により、2期工事で1.25カ月、3期工事で1.50カ月、両工程で2.75カ月の短縮が可能と判明。さらに構造設計の変更により、1.25カ月の短縮を検討している。
具体的には、2期工事では▽解体工事着手時期の見直し(-0.25カ月)▽コンクリート打設作業時間の見直し(-0.5カ月)▽都・消防など関係機関の検査を重複して実施(-0.5カ月)―が行われる。また、3期工事では▽コンクリート打設作業可能時間の見直し(-0.25カ月)▽各関係機関の検査を重複させることによる検査期間の見直し(-0.5カ月)▽工事期間中の中央区道の道路占用※工事エリアとしての利用(-0.75カ月)―を行う。
また、法令順守や事故を防止する観点から、工程検証委員会は以下の要望を出している。①原則、大成建設の責任による自主施工、②関係者間の協議・調整、③性能確保・責任分担の明確化、④周辺住民、建物利用者、区民への信頼の回復、⑤経験豊富な社員の配置、⑥現場で働くすべての人への配慮(安全確保、労働関係法規の順守など)。2024年4月に建設業に適用される労働時間規制についても、「発注時点で見込まれていた」として、確実に履行することを求めている。
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