債券市場で進む長期金利の上昇は、家計や企業活動にも影響を及ぼす。住宅ローン金利は、固定型のさらなる引き上げが不可避で、企業の資金調達環境も変化しかねない。政府では国債の利払い費が膨らみ、財政運営を圧迫する恐れがある。
7月の日銀による金融政策修正以降、大手銀行は住宅ローンの代表的な「固定期間10年」の基準金利を2カ月続けて引き上げた。住宅ローン金利の参考指標となる長期金利の上昇が続けば、「固定型金利を引き上げる可能性が高い」(大手銀行)との声は多い。
一方、住宅ローン利用者の7割が選択しているとされる変動型金利は短期金利の動向に連動する。日銀の審議委員からは最近、マイナス金利政策の解除時期を巡る発言が出ており、植田和男総裁も一部報道機関のインタビューで今後の「選択肢」として言及した。「実際に解除されれば、変動型金利の上昇は間違いない」(ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長)といい、変動型の利用者にも影響が及びそうだ。
長期金利の上昇は、先進国で最悪水準の日本の財政状況も圧迫する。財務省の試算によると、10年債の利回りが今年1月時点の想定より1%上昇した場合、借金に当たる国債の利払いや返済に充てる「国債費」は26年度に3.6兆円膨らむ。金融政策の追加修正があれば長期金利に上昇圧力が加わり、国債費がさらに上振れする可能性もある。政府予算で110兆円を超す一般歳出総額に占める国債費の割合は、4分の1程度に達する。利払い費の負担が重くなれば、重要な政策経費に予算を振り向ける余地が一段と狭まることになる。
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