住宅業界の経営者仲間からは、「うまくいっているね」と言われることが多い。そんなとき、「今はね」と冗談交じりに返している。私は、これまでに数えきれないほどの失敗を積み重ねてきた。そうした経験があったからこそ、今がある。今回は10年前の“ズタボロ”になった経験を伝えたいと思う。何かの参考になれば幸いです。
当時、社長に就任して間もない頃。住宅業界は消費税増税(8%)後の混乱の中にあった。駆け込み需要後の冷え込みは激しく、当社も大きな影響を受けていた。受注が思うように伸びずに苦しい中、私が取った策が「値下げ」だった。
値下げと言っても、単に利益率を下げるという策。仕様を変えるわけでもなく、合理化をしたわけでもない。営業からは「もっと安ければ受注が取れる」という声が飛び交っていた。当時を思い出すだけでへどが出る。その声を値下げの判断の言い訳にしていたのかもしれない。いずれにせよ、深く考えず、目先の利益のみを見ていた。実に愚かだ。
結果はどうであったか?受注はまったく伸びなかった。利益率を下げた分、受注を強化し130%増を目指していたものの、値下げ前と受注数はほぼ変わらなかった。絶望的な数字である。
受注棟数は変わらず、すなわち、売り上げは変わらずに、利益のみが低下する。
住宅業界は1棟の利益のインパクトが大きく、利益率の低下はそのまま業績の悪化につながる。この年の業績は「ズタボロ」だったことは言うまでもない。
こんな当たり前のことを私は・・・
この記事は新建ハウジング9月10日号8面(2023年9月10日発行)に掲載しています。
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