大和ハウス工業(大阪市)と大和リビング(東京都新宿区)は9月5日、エネルギー事業を展開するサンワ(群馬県前橋市)とともに、雨天時でも約10日間の停電に対応可能な「全天候型3電池連携システム」を搭載した、ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化に向けた実証実験を12月27日から開始すると発表した。期間は2025年12月26日までの2年間。
同実証実験は、サンワが事業主となる新築賃貸住宅「(仮称)エコンフォート前橋駒形」に、「全天候型3電池連携システム」とカーボンニュートラルLPガスを採用。入居者の快適性・意識調査を実施するほか、各設備のエネルギー供給状況・稼働率、余剰電力量のデータを集積し分析・評価を行う。
全天候型3電池連携システムは、太陽光発電システムとエネファーム、家庭用リチウムイオン蓄電池を、大和ハウス工業が開発した「切換盤」で連携させることで、停電時の電力・給湯を確保するとともに、通常時の光熱費を削減するシステム。「切換盤」を設置することで、エネファームで発電した電力を家庭用リチウムイオン蓄電池に蓄え、家庭内で使用することもできる。
実証実験では、物件全戸に同システムを搭載。大和リビングとサンワが、入居者が日常生活で使用するエネルギーや設備の稼働率、余剰電力量のデータを分析する。通常時は、エネファームが発電した電力に加え、昼間は太陽光発電システムが発電した電力を使用できるため、年間光熱費を削減可能。供給したエネルギーや稼働率、利用状況のデータは、大和リビングの入居者へのヒアリングによって蓄積、分析する。災害による停電時は、家庭用リチウムイオン蓄電池が非常用電源として電力を供給。エネファームが発電する電力を家庭内で使えるほか、家庭用リチウムイオン蓄電池に蓄えることで、雨天でも約10日間の電力と給湯を確保できるという。停電時に利用可能な設備は、各戸のLDK照明、冷蔵庫、コンロ(ガス)、お風呂(ガス)、トイレ、電源コンセント。
同実証実験で採用するカーボンニュートラルLPガスは、原料採取から最終利用までの全過程で排出されるCO2を、植林や森林管理などによる環境保全活動などにより差し引き、実質「ゼロ」とみなすことができるプロパンガス。同物件は、カーボンニュートラルLPガス、太陽光発電システムなどにより、一般的な賃貸住宅と比較してCO2排出量収支を200%削減。また、各戸に配置される分散型エネルギーのため、災害等でガスの供給が遮断された場合も、個別の調査・点検により、都市ガスや系統電力より相対的に早く復旧させることができるという。
今後は、同実証実験の結果を踏まえ、高効率な利用方法やエネルギー制御システムの改善・開発、導入コストの削減などを行いながらネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化を目指す。
「(仮称)エコンフォート前橋駒形」は、全戸「ZEH」仕様、かつ住棟単位で「ZEH-M」の基準を満たし、建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」による第三者認証を取得。屋上に太陽光発電システム(発電出力:約4kW/戸)を設置し、あまった電気は家庭用リチウムイオン蓄電池(5.4kWh/戸)に蓄えることで、夜間や停電時にも利用できる。
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